食足世平
先達て、と言っても四月初めのことですが、日清食品下関工場の観音様奉安十五周年祭がありました。ご存知の方もお出でと思いますが、日清食品の創始者安藤百福さんとその奥様仁子様はご生前観音様を篤く信仰され、日清食品のすべての工場は観音様をお祭りしているのです。
当地の下関工場も正面入り口左のお堂に聖観音様をお祭りし、係の方による平素のお守りに加えて五年毎に周年祭をしておられますが、今年はその十五年目ということで現社長夫人、安藤淑子様(写真前列右から二人目)ご出席のもと、ご縁を頂いている当観音寺が法要に携わらせて頂きました。上の「食足世平」という言葉はその折の法語の一部ですが、実はこの言葉は安藤百福さんの言葉なのです。その意味を申し上げる前に法語をご紹介いたしましょう。
草木菁々天地清 草木萌える清明の春
偏界不蔵山水声 天地一杯観音様の
日清観音十五年 お力お蔭の十五年
謝祈願食足世平 食足りてこそ世は平和
カップヌードルは今では世界中の人に愛され、同時に飢餓を救い時間を節約する貴重な食品になっていますが、その発明者安藤百福さんはつとに人間の食に対して深い関心と洞察力をお持ちの方でした。だからこそカップヌードルの発想につながったのでしょうが、その慧眼の中で生まれたのがこの「食足世平」という言葉なのです。
百福さんはそのご著書の中で「食糧は命の糧です。人の命を支えているのです」「食のあり様が乱れた国は必ず衰退する。食足世平が私の信念です」と言っておられます。世界中の人びとが飢えから解放され、命を支える食事に満足した時世界の平和が訪れることを確信されたのでありましょう。私たちはいま百福さんが残されたこの「食足世平」という言葉を心に刻んで考えたいと思います。食べる。生きる。平和。世界人類の願いであるこの三者が不可分に結びついていることを知るために。