花は仏④ №265

花は仏④ 
平成26年5月23日

 花は仏④  

 いま路傍に咲いているオレンジ色の可愛い花。ご存知の方も多いと思います。ヒナゲシです。いつでしたか、このたよりでこのヒナゲシのことを書きました。私は若い頃初めて、この花をアフガニスタンで見たのです。不毛というほど痩せた土地に咲いているこの花を見て心癒された思い出の花です。この花が最近、下関界隈でもよく見られるようになりました。
 
 この花、実は519日の誕生日の花なのですが、その花言葉が「慰め」であることを私はつい最近知りました。花言葉の由来は知らず、奇しくも私はこの花を初めて見た時に花言葉そのままの慰めと癒しを感じていたことになります。それほどにこの花は見る人に健気で可憐な印象を与えるのでしょう。
 
 木であれ草であれ、植物は置かれた場所に育つしかありません。その場所がその植物に適したところであれば幸いですが、そうでなくとも移動は出来ません。そこで花を咲かせ実を結ぶ努力をしなければなりません。私がアフガンでヒナゲシを見たときの感動は、まさに不毛の荒れ地に耐えて花を開かせた健気さであったのです。
 
 愚痴や不満は人間の習い、悲しい(さが)です。しかし、木や草のように与えられた場所で黙々と努力をすることができたら、それこそが仏です。花は人に褒められたくて咲くのではありません。深山の花は人知れず咲いて人知れず散っていきます。 夏の暑さ冬の寒さに耐えて己が力精一杯、植物はみな仏そのままを表わしています。
 
 私たちもこの木や草の心に習いたいと思います。が、そこには大いなる覚悟、決心が必要ですね。実はこのヒナゲシ、姿に似合わず脅威的繁殖力を持っているそうです。正確にはナガミヒナゲシ(長実雛罌粟)と言いますが、文字通り、長めの実の中にそれこそ芥子粒の種を1600ほども持っていて、その繁殖力で雑草化したのだそうです。
 
 ナガミヒナゲシは、日本では1961年に東京世田谷区で初めて確認されたのだそうですが、2007年には沖縄を除く日本全国に見られるようになったと言います。最近よく目につくようになったのもその脅威的繁殖力の所以。可愛い花に似合わぬ一面と言えますが、仏の道も人知れぬ努力と覚悟が必要と言うことでしょうか。

 

 

          「置かれた場所で咲きなさい」
                     渡辺和子