歩く意味 №319

歩く意味 №319
平成27年 4月21日


歩く意味 
 
 今日はお大師さまの日。空海、弘法大師さまの日ですね。今年は四国霊場が開かれて1200年という記念の年だそうです。小中学生の皆さんも聞いたことがあると思いますが、四国霊場というのは四国四県にある札所と呼ばれる八十八か所のお寺のことで、その札所参りを一般にお遍路とか四国巡礼と言うのです。
 
 このお遍路が今のような形になったのは、何百年という長い年月がかかってのことですが、その元はもちろん、若き日の空海さんが自分の生まれた四国をくまなく歩いて修行したことにあります。遍路という言葉は、辺鄙な土地、片田舎をさす「辺地」とか「辺土」が語源ようですが、空海さんはそんな道を歩いて修行したのです。
 
 私はこの「歩く」ということに修行としての意味があると思います。人間にとって最も基本的な活動が歩くという行動であると思いますが、動物のように四足ではなく二本足で歩くということに大きな意味があると思います。一定のリズムでひたすら歩き続けることが、私たち人間の意識や体によい変化をもたらすに違いありません。
 
 それを私は自分自身のお遍路でも体験しましたし、養護学校での歩行学習でも実感をすることが出来ました。養護学校の歩行学習は週一度、二時間ほど里山の道を歩くというものでしたが、それを続けていると、子どもたちの心身に明らかな成長が見られるのです。その成長はどう考えても歩くことによって得られたとしか思えませんでした。
 
 歩くという極めて単純な行為とその繰り返しには恐らく人間の生存と発達にかかわる不思議な力があるに違いありません。そしてそのことが、ひいては自分とは何か、人間とは何かという根源的な問いにヒントをもたらしてくれるのだろうと思います。空海さんはきっと辺地を黙々と歩くことによって悟りを得たのでありましょう。
 
 小中学生、そして高校生の皆さん、皆さんは日常よく歩いてくれていますか。どうぞ億劫がらずに歩くことをして下さい。車に乗せてもらうことに頼らず元気にしっかり歩いて下さい。時にはまるで歩く機械になったように歩いて下さい。そのことによって皆さんはきっと何かを感じることが出来るでありましょう。
 

         あるこう あるこう わたしはげんき
         あるくの だいすき どんどんいこう…
                「さんぽ」(となりのトトロ)