ウソ言葉 №336

ウソ言葉 №336
平成27年 8月17日

ウソ言葉

 転居を知らせる葉書などに「お近くにおいでの時は是非お寄りになって下さい」って書かれているのがありますね。あれを真に受ける人は少ないとは思いますが、実際にそれがないとは限りません。「それが本当に来ちゃってさぁ」と話す人に出会ったことがあるのです。その人からすれば、まさかの来訪が迷惑だったのでしょう。
 
 恐らくは「お寄り下さい」と書く人の大半は、来るはずはない、という思いなのでしょうが、それでも社交辞令なのでしょうか。改めて考えると、来ることを全く想定しないばかりか、寄られたら迷惑、とまで思っているとすれば、些か疑問を覚えます。言葉と気持ちが反していたら、それはやはり嘘としか言えないのではないでしょうか。
 
 ずっと以前「ちかめし」という代議士だか大臣がいたそうです。人に出会うと「近いうち飯食いに行こう」と言うのが口癖だったそうですが、それが実行されることはなくて付いたあだ名が「ちかめし」。でも、これは相手の気持ちを傷つけるまでにはなりませんからまだ罪が軽いと言うべきでしょう。
 
 そういえば、「地球に優しい」と言うのもありますね。省エネ製品や自動車のコマーシャル等にこの言葉が使われています。でも、ちょっと考えるとこれも変ですね。優しいというのはそれ以前の製品に比べれば公害が幾分少ないか地球熱化の割合が減少したということであって、基本的に地球環境にとって有害であることは変わりないのです。
 
 と考えてくると、私たちの回りには、うっかりすると騙されやすい言葉、つまりは「ウソ言葉」が一杯です。私たちはその「ウソ言葉」の裏を見抜かなければなりません。その言葉の裏に潜む真実を見抜かなければなりません。その意味でいま私が最もウソだと思っているのは「積極的平和主義」という言葉です。
 
 現政権が「積極的平和主義」という言葉の下に平和を冠にした安保法制を成立させようとしていますが、それは「平和」という言葉を使いながら、その真実は国家による武力行使、つまりは戦争国家への逆戻りを意図する欺瞞に満ちた平和主義でしかありません。いま私たちに大切なのは真実を見抜く判断力です。

 


            そんかとくか 人間のものさし 
            うそかまことか 佛さまのものさし
                     相田みつを