一 期 一 会 №18

平成21年7月7日


一 期 一 会

 今日は七夕。彦星さんと織姫さんは天の川を眺めながら年に一度のデートを楽しんでいることでしょう。そういえば、私も年に一度の友人がいるんです。一年一度六月、ビヤガーデンが始まった日に乾杯しようと約束したビール友達です。以来もう二十年以上になるでしょうか。私がこの道で修行を始めてからは会えなかった年や季節はずれになった年もあって約束通りには出来ていませんが呑み助仲間の友情という訳です。

 最初から話が脱線してしまいましたが、茶道に「一期一会」という有名な言葉がありますね。茶会での出会いを一生に一度の出会いと心得て務めよ、という教えですが、私たちは普段の生活のなかでこの言葉をどのように捉えたらよいのでしょうか。

 私が養護学校に勤めている時、高等部にK君という優秀な生徒がおりました。K君は重度の脳性まひでしたが、ある時、「なぜだろう。この一瞬が過去になる」という名言に行きついたのです。今ではK君はいまは作家になって活躍しておりますが、まさにK君が気づいた過去になっていくこの一瞬が一期一会にほかなりません。見ること、すること、考えること、それら日常生活すべてが再びは戻ってきません。すべてが一期一会なのです。

 しかし、私たちは普段一瞬はおろか、家族も友達も学校も会社も一期一会とは夢にも思いません。家族も友達も今日と同じように明日もまた顔を合わせ、今日と同じように明日も学校や会社に行くと信じきっています。しかし、一体どこにその保証がありましょうか。保証はどこにもありません。明日もまた、というのは勝手な思い込みに過ぎないのです。

 こうして考えると、一期一会というのは「諸行無常」と同じことだと思います。すべてのものは瞬々刻々変化して止みません。一瞬たりとも同じ状態にはないのです。同じように見えるのは思い込みにすぎません。今日は再び帰ることなし。一期一会の教えは今を大切に生きるということなのでしょうね。



いいえ昨日はありません
今日を打つのは今日の時計
昨日の時計はありません
今日打つのは今日の時計
      ~三好達治~

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