メルケル首相の「呼びかけ」 №588

メルケル首相の「呼びかけ」 

令和2年5月18日

 去る318日に行われたドイツ・メルケル首相のテレビ演説「国民への呼びかけ」の原稿を読むことができました。すでにお読みになった方もお出ででしょうが、その演説はコロナ危機に直面した首相の決意と国民への思いやりに溢れていて感動を与えずにはおきません。メルケル首相の気持ちの一端でもお伝えできたらと思います。

 まず危機感。メルケルさんはコロナ危機が「東西ドイツ以来、いいえ、第二次世界大戦以来、これほど市民による一致団結した行動が重要になるなるような課題がわが国に降りかかってきたことはありませんでした」と言い、その状況を「コロナウイルスに対する治療法もワクチンもまだありません」と明らかにしています。

 メルケルさんはその状況にあって「唯一できることはウイルスの拡散スピードを緩和し時間を稼ぐことです」と言い、「その手段とは私たち自身です」「私たちが力を合せて行動することで自分たち自身を守りお互いに力づけることができるかということです」「一人ひとりの行動が大切なのです」と国民全員による予防の実践を呼び掛けています。

 その上で首相は、いま命を救うために旅行や移動の自由を制限する以上「連邦政府は経済的影響を緩和し特に雇用を守るために可能なことはすべて行います」と約束し「食料品供給が常時確保されることを信じて安心して下さい」と述べた後で「買い占めは無意味です。(それは)完全に連帯意識に欠けた行動です」と注意を促しています。

 またその一方、医師、看護師など医療施設で働く人たちやスーパーで働く人たちに対しても「毎日仕事に向かい人のために尽くしていること、店の営業を維持してくれていることに心から感謝します」と労いの言葉を忘れません。このメルケル首相の呼びかけを聴いた人はこのメルケルさんこそ真の指導者だという思いを深くしたことでありましょう。

 今回、この「呼びかけ」を送って下さったKさんは「同じ敗戦国で同じように奇跡の復興を遂げたドイツと日本ですが合理的にものを考え、他人との議論を是とする教育をされた国民と“和をもって…”の教育を受けた国民がそれぞれに選んだ首相にえらい違いが出てきたと思います」とおっしゃっています。同感極まりありません。

 

私たちは思いやりを持って理性的に行動し、

それによって命を救うことを示さなければなりません

               <演説最後の言葉>

コロナに学ぶこと №587

 コロナに学ぶこと

令和2年5月17日 

最近「新しい生活様式」という言葉をよく聞くようになりました。何のことかと思いましたらコロナに感染しないための「手洗い」「うがい」「マスク」「ステイホーム」を心掛けましょうということらしいですね。要するにコロナウイルスにとりつかれないよう予防に努めて下さいということなんですね。

 でもマスクはともかく手洗いうがいは日常的に大切なことですから改めて言われるまでもありません。ステイホームはコロナが収束した途端死語になってしまうに違いありません。コロナ予防法に過ぎないこれらを「新しい生活様式」と呼ぶことには違和感しか覚えませんが皆さんはどうお思いでしょうか。

 新しい生活様式、と言うのであれば今回のコロナ感染に学んだことをこれからの私たちの生活に活かすことこそがそれではないでしょうか。子どもたちの休校は3ヵ月にもなりました。在宅勤務が増えました。3密によって外出や集会を控えざるを得ませんでした。これまでの生活から見れば不自由不便を強いられることになりました。

 しかし、その不自由不便な生活を逆に考えればこれまでの生活に無駄無理無用なものが多かったことにも気づくに違いありません。とすれば、私たちはコロナによって強いられた不自由不便をただ拒否するのではなく、コロナ以前の生活をもう一度見直すこと、再点検することが必要ではないでしょうか。

 その再点検で私が申し上げたいのは生活のアナログ化です。前にも申し上げましたが、私たちは“早い簡単便利”を求めて生活のデジタル化をしてきました。しかし、今ここでもう一度生活のアナログ化を考えなければならないと思うのです。アナログは面倒です。しかし、その面倒なことの中にこそ生活の実感があるように思えてならないのです。

 アナログ化で端的なことの一つがコミュニケーションです。コミュニケーション手段の基本は「会って話す」でしょうが、今はSNSが当たり前になりました。SNSは便利簡単ではあってもコミュニケーション価値が限定化されることは言うまでもありません。このことに限らずコロナを機に生活を考え直す。それが必要ではないでしょうか。

 

     (コロナ)禍を転じて福と為す

               <戦国策>