雑草考 №642

 雑草考

 令和3年7月18日

 いきなりですが皆さんは雑草の定義をご存知ですか。広辞苑によれば雑草とは「人が管理している土地に生え管理対象に悪影響を与える望まれない植物、とくに草本植物を雑草と呼ぶ」とありました。要は菜園であれ花壇であれ植えている植物に邪魔になる草は雑草ということになるのでありましょう。因みに原野に生える草は「野草」と言うそうです。

 ところで、何でまた雑草か。実はこんなことがあったのです。5月のことですが庭に咲いたタツナミソウを一輪挿しに差して一週間ほど楽しんだ後、それを何の気なしに植木鉢に差しておいたのです。すると何と言うことでしょう。そのタツナミソウはその植木鉢に根付いてしまったのです。驚きました。

 したら先月末、本堂の屋根雨樋にヨウシュヤマゴボウが咲いているのが見えました。そのヨウシュヤマゴボウは昨年も同じところに芽を出していましたから同じものに違いありません。昨年の夏の日照りに茎は枯れてしまったものの根は夏の暑さと乾燥に耐えて今年また芽を出したのでありましょう。これにも驚きでした。

 余談になりますが、ヨウシュヤマゴボウはヤマゴボウとは言ってもシソ科の多年草で食用にするヤマゴボウではありません。お土産で売っているヤマゴボウはモリアザミを栽培化したゴボウアザミと言われています。漬物のヤマゴボウにはほかにハマアザミやフジアザミなども使われるそうですがこれらはみなキク科の多年草です。

余談恐縮。恐らく皆さんも雑草という言葉には「強い」「しぶとい」というイメージをお持ちだろうと思いますが、まさに上のタツナミソウもヨウシュヤマゴボウもそのイメージそのままという気がします。生き延びる僅かな条件を無駄にしない、時が来るまではじっと耐えしのぶのは強さしぶとさの原点でありましょう。

 民草と言う言葉があります。人民を草にたとえて言ったことばです。蒼氓(そうぼう)とか蒼生(そうせい)という言葉も民を青く茂る草にたとえた言葉です。コロナ禍に加えて政官財界に腹立たしいニュースが伝えられるいま民の力こそが求められているのではないでしょうか。皆さん、たゆまずへこまず雑草の精神で頑張りましょう。

 

やっぱり一人がよろしい雑草

            山頭火


同調圧力 №641

 同調圧力

 令和3年7月17日 

 神奈川県にお住まいの畏友Uさんから手紙を頂きました。例のワクチン接種のことです。Uさんは接種券が届いた5月半ば、その日のうちに申し込んで最短の731日に予約をしたそうですが、その作業をしながらUさんはふと「予約を急がされ、みんなのためお国のためと接種するのが当たり前という風潮にあれ?」と思ったというのです。

 この話を聴いて私はUさんの感覚の鋭さを思いました。皆さんの中にはすでに2回目の接種を終えた方もおいででしょうし1回目を済まされた方は沢山おいでと思います。話を聞くと予約を取るための電話を何度してもつながらなかった方が多いようですから恐らくは皆さん予約に必死で考える余裕もなかったのではないでしょうか。

 私がUさんの手紙で思ったことは表題の「同調圧力」です。この言葉皆さんも最近耳にしていると思いますが、広辞苑には載っていません。よほど新しい言葉かと思いましたが、英和辞典には載っていました。同調圧力(peer pressure)とは「自分が異分子にならないよう周囲に同調しようとして感じる精神的抑圧」とありました。

 私はこの同調圧力は一人で感じているならまだしも他人に要求する圧力になってはならないと思います。Uさんが「あれ、」と思ったのはまさにその点ではなかったでしょうか。自粛警察を持ち出すまでもなく日本には以前から「みんながそうしているんだからそれに従え。外れることは許さない」という空気があると思います。

 コロナの昨年来自殺者特に女性の自殺者が増えていることが問題になっていますが、世間学で知られる佐藤直樹(九州工業大)名誉教授は、この背景にコロナの同調圧力があると指摘されています。 恐らく女性の自殺者が増えている根っこにはそれがあるのでしょう。同調圧力が人を死に追いやっているとしたらそんな悲しいことはありません。

 同調圧力は横ならび意識が強い日本人が陥りやすい欠点かもしれませんが、異端、異分子の排除は時の為政者に加担することにもなりかねません。為政者が望むことを同調圧力者がやってくれるなら為政者には「濡れ手で粟」です.同調圧力はそのような危険を持っていることに注意したいと思います。

 

 同調圧力は為政者の思うツボ