馴 化 №217



馴 化

平成25年8月17日

 いや、この夏の暑いこと。つい先日12日は、高知県四万十市で国内観測史上最高の41.0℃を記録したということですから間違いなく今夏は酷暑なのでしょう。むろん皆さんも、それを聴くまでもなく今年の異常な暑さを身を持って感じておられるに違いありません。今年は梅雨明けが早かったこともあって一層厳しい夏になりました。

 先日、Yさんとこのお話をしていて、猛暑がさらに厳しさを増していったら人間はどうなるのかという話になりました。生物学が御専門のYさんは、人間はそれに順応するだろうという考えです。その一つの例として三年ほど前、「爆問学問」で南極のマイナス50℃の世界の案内役をされた国立極地研究所の本山秀明教授のことを挙げられました。

 本山教授はその番組で、マイナス50℃の部屋に爆笑問題の二人を案内するのですが、まつ毛も凍るという極寒の部屋でも素足にサンダル、半袖姿なのです。片や防寒服に身を固めながら寒さに震える爆笑問題の二人との違いはどこにあるのでしょう。Yさんは、それこそが南極観測に十度も参加している本山教授の寒さに対する順応とみるのです。

 異なる環境に移された生物が次第に慣れてその環境に適応していくことを「馴化(じゅんか)(順化)」と言います。気候や高地に対する適応がその典型と言えますが、本山教授の耐寒性はまさにそれではないかという訳です。そういえば、以前インドに行った時、彼の地の人たちは気温25℃で「寒い、寒い」と言っていました。同じことなのでしょう。

 考えていて思い出すことがありました。そのかみ、日本医師会長として敏腕を振い、けんか太郎の異名をほしいままにした武見太郎さんが、人間が氷河期を乗り越えられたのは“未来からの反射”によって、寒冷な気候に耐えうる能力を獲得したからだ、と言われたことがあるのです。その不思議な話にびっくりした記憶があります。

 いずれにしても、人間はその環境に対して適応できる未知なる能力を持っているに違いありません。馴化というのは人間が持っている不思議な力のスイッチがオンになるということなのでしょう。してみると、私たちの日常の祈りもきっといつか何かをスイッチオンにしてくれるのでしょうね。
 

      習うより慣れよ
      Practice makes perfect(練習が完全を作る)