「慰霊の日」に №328

「慰霊の日」に №328
平成27年 6月23日

「慰霊の日」に 
  
 623日は沖縄の「慰霊の日」です。70年前のこの日、沖縄の日本軍はアメリカ軍によって壊滅しましたが、この日に至る三ヵ月間の地上戦で沖縄は兵士と住民合わせて20万人が戦禍に斃れました。機銃掃射に撃たれた人、火炎放射器で焼き殺された人。自決した人。想像を絶する悲惨な状況の中で戦死した多くの人を思うと胸の痛みを禁じ得ません。

この沖縄戦では「ひめゆり学徒隊」に象徴される多くの学生や若い人が犠牲になりました。女子生徒はひめゆりの他、白梅、ずゐせん、積徳など学校別の看護隊がありましたが、これらに動員された590人のうち過半数の330人以上が戦死しました。男子生徒も学校ごとに組織された「鉄血勤皇隊」総勢2千人のうち半数の千人が亡くなっています。

映画「ひめゆりの塔」の香川京子さんが23年前に著された『ひめゆりたちの祈り』には奇跡的に助かった「ひめゆり」の方々の多くの証言がありますが、その悲惨な体験は涙なしには読むことが出来ません。またそのような状況の中でみんなを励まして傷病者の看護に当たり、壮絶な最期を遂げた上原貴美子さんの崇高な行為には胸を打たれます。

香川さんがこの本を書かれたのは、映画「ひめゆりの塔」に出演されて後、ひめゆりの方々との交流が続いたからですが、同時に「戦争だけは絶対に繰り返してはならない。幸福の最大の条件である平和をなんとしても守っていかなければならない」というご自身の“祈りに似た気持ち”を若い世代の人たちに知ってもらわなければならないと思われたからと言われます。

香川さんはこの本の最後で「戦死者から生存者へのメッセージ、あるいは祈りは何でしょうか。すくなくとも、一つだけ、私にとってたしかなことは、<もう、二度と戦争は起こさないでほしい>ということだと思います」とおっしゃっていますが、今ほどこの言葉が痛切に感じられる時はないと思います。

 もう十年近く前になりますが、徒歩で沖縄の戦跡巡礼をしたことがあります。ひめゆりの塔を初め、各所の慰霊塔に拝する度に粛然とせざるを得ませんでしたが、分けて最後の逃げ場が火炎放射器によって焼き尽くされた幾つかの地下壕を訪れた時は息を呑むしかありませんでした。戦争を再びしてはならない。日本はそれしかありません。
 


        いはまくら かたくもあらむ やすらかに 
        ねむれとそいのる まなひのともは
            ひめゆりの塔歌碑(仲宗根政善)