『星になったチロ』を読んで №27

平成21年11月17

『星になったチロ』を読んで


 みなさんは『星になったチロ』という本を読まれたことがありますか。今から30年ほど前、福島県にある「白川天体観測所」の天文台長を12年間勤めた犬のお話です。私はつい最近になってこの本を読む機会を得たのですが、チロという不思議な犬とチロをめぐる人々の感動を時空を越えて実感し、同時にこの本は子どもたちにこそ読んでほしいと思いました。この本のお話はお釈迦様の教えに合致することが多かったのです。

 その一つは縁と出会いということです。著者藤井 旭さんはチロとの最初の出会いはデパートの犬の展示会で「目が合った」ことだと言います。幼かったチロと「目が合った」ことが藤井さんの生涯を決める決定的な縁と出会いになったのですから藤井さんならずとも不思議としか言いようがありません。藤井さんは本のあと書きで「大切なふし目ふし目でいつもわたしは心のささえになり勇気づけてくれるイヌたちとそれをめぐるさまざまな人たちとの幸運な出会いにめぐまれてきた」と言われていますが、考えれば自分自身も様々な縁や出会いによって生かされてきたのだと思わざるを得ませんでした。

 もう一つは犬としてのチロ、畜生とは何かということです。俗に人をののしる「犬畜生」という言葉がありますし、六道輪廻における畜生(界)は欲望世界の象徴的存在として設定されているのでしょうが、ではイヌネコすべてがそういう存在なのでしょうか。藤井さんはやはりあと書きで犬のことを「ご飯なんか貰うより人間たちと行動して喜びを分かち合うことの方が最高にすてきだと思っている類まれな動物」と言っていますが、この言葉はチロのような犬に会えば至極当然、愛犬愛猫と暮らしている方も頷かれることだと思います。

 そういえば、わが観音寺にも16年間住職を勤めている「住職ネコちゃん」がおりますが、このネコちゃんもチロ同様、お詣り下さる皆さまとのふれあいを無上の喜びとしている類まれなネコちゃんです。畜生侮るなかれです。



徳を(やしな)いて生きる
      これ畜生なり
         住職ネコちゃん

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