人生の妙味 №75

平成23年3月12日

人生の妙味


 皆さんも同じかと思いますが、長いこと生きてくると、ふと「人生って?」考えることありますよね。一つのことをやり遂げた人の中には悠々としてこだわらず「これこそ人生」と思わせてくれる人がいますが、そういう人は私には誠に羨ましい限りです。馬齢を重ねるだけでなれる境地ではありません。

 私が教員になりたての頃、指導して頂いたのはH先生という女性の先生でした。この先生にはその後ずっと妻子共々お世話になっていますのでただ感謝しかないのですが、最近はお身体の不調を思われることが多くなりました。元々心身ともに優しい方ですからお歳とともに不調を感じることが多くなったのです。

 つい先達て久しぶりその先生にお会いしたら、今は起きているのに瞼が下がってしまうことにお悩みとのことでした。しかし、その先生が「身体の不調はね、長生きしたからこうなったって思うのよ」と言われたのです。この言葉に私自身はっと教えられるものがありました。これが達観、と思ったのです。真の意味での「諦め」。むしろご自分にはつらい状況を甘んじて受け入れるという潔さ(いさぎよ)だと思いました。

 この話には続きがありました。H先生が娘さんに「こんな状態じゃもうすぐ死ぬかも・・・」と言ったら、その娘さんがあっさり「そうね」と言ったというのです。これを聞いて私は思わず吹き出してしまいましたが、同時にいい話だなぁと思いました。娘さんというのは医師で都内のある大きな公的病院の皮膚科部長先生なのです。そういう関係のお二人だからこの話の面白さと深さがあるという訳です。

 人生長いばかりが能ではありませんが、長生きして初めて感得出来る境地、思いもあります。それが人生の妙味を感じさせてくれるのではないでしょうか。その妙味を味わう時までどうぞ皆さんも長生きして下さい。



   老いのほんとうの意味はむしろ熟の意である。
             ~本荘可宗「人生開眼」~

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