まいにち富士山 №116

平成23年11月5日

まいにち富士山


 表題そのまま『まいにち富士山』という本があります。(佐々木茂良著・新潮選書)。帯のコメントに「64歳で初登頂!通算800回超の名人が明かす醍醐味とコツ」とあるように、この本は64歳で初めて富士山に登った著者が登り続けて6年、ついに通算800回を超える富士登山の偉業を達成したという驚異の記録なのです。

 著者の佐々木さんはこれまで何回となくテレビ・ラジオ、新聞・雑誌等で紹介されていますのでご存知の方もお出でかも知れませんが、実はこの著者・佐々木茂良さんは私の教員時代の先輩であり、仕事中大変お世話になった方なのです。元々ユニークかつエネルギッシュな方なのですが、先輩がこのような偉業を達成されたことには後輩として深甚の敬意しかありません。

 しかし、本を読んで通算800回超という記録が並みの体力や気力で生まれたのではないことを改めて痛感させられました。山開き前の5月から11月厳冬を前に五合目への道が閉鎖になるまでの間、登山可能な日は朝5時に家を出て70km先の富士山に“毎日”行くのですからもはやこれだけで尋常ではありません。通勤というべきでしょう。

 しかもこの間、登山中に遭遇した突風や豪雨、濃霧、クレバスへの落下等一つ判断を誤れば命を落としたであろうという危険に何度も遭っているといいます。「思い出してもぞっとする」というほどの恐怖の体験をしながらよくぞ続けられたとしか言えません。しかし、その体験を読んでいて私が感銘を受けたのは「祈り」を言われていることでした。

 突然の豪雨に遭って為すすべを失った時のことを「打つ手がないのである。為す術は? たったひとつ、祈ることである。ひたすら祈りつづけることである」「あらゆる手をつくして万策尽きたと思ったら祈ることである。祈ることによって地獄のような場面・場所からの“脱出力”を生み出す気力を体中に漲らせていくことが大事である」と書かれているのです。

 感銘でした。私が常々皆さまに申し上げている祈りの真髄がここにあると思います。祈りは力です。一心の祈りは不思議な力を呼び起こすのです。先輩の富士登山の体験から私は祈りの力を再認識させて頂きました。先輩の登山は今も続いています。先輩ソワカです。
 


    一心(いっしん)称名(しょうみょう)
       観世音(かんぜおん)菩薩(ぼさつ)
     即時(そくじ)(かん)()音声(おんじょう)
         (かい)(とく)解脱(げだつ)
                    ~<観世音菩薩普門品>~

0 件のコメント:

コメントを投稿