いまでしょ! №301


いまでしょ! 
平成27年1月1日


 先達て、こんなことがありました。久しぶりにお参り下さったOさんとお話ししていたら、実はOさん、刀剣がご趣味というのです。先年、萩で展示会があった時など期間中、何度も見に行かれたというほどですから、趣味の段階はとうに超えているのでありましょう。伺っていてその造詣の深さには敬服せざるを得ませんでした。

 その一つに「刀()ぎ」のことがありました。刀というのは刀鍛冶が打ってから研師(とぎし)が磨くのだそうです。浮世絵が彫師(ほりし)の後、摺師(すりし)の手に渡るように、刀は鍛冶から研師に渡って完成するのだそうです。ということは、刀を打つことと磨くことは全く別のことなのでしょうね。刀が分業で作られるとは知りませんでした。

 で、これからが今日の話です。Oさん、以前から刀磨ぎに魅かれていたのだそうです。元々、研ぐということに関心がおありだったのでしょう。若い時から刃物を研ぐことが得意で、家の物ばかりか、頼まれて研ぐことも多く、研師に憧れていたものの、残念ながら本格的な修行に至らぬまま来てしまったと言われるのです。

 これを聞いて私は、これからすぐ刀磨ぎを始めて下さい、とお願いしました。刀磨ぎとして完成するかどうかは別にして、とにかくこれからその修行を始めて下さいとお願いしたのです。そうしましたら、何とその数日後、Oさんが刀磨ぎの勉強を始めて下さったというのです。こんな嬉しいことはありませんでした。

 いつも申し上げていることですが、人はみな自分のしたいこと、しなければならないことを自分の人生の目的として生まれてきています。それを探り出してその道を歩むことが人の使命なのです。何が課題か、その発見は決して容易ではありませんが、ヒントは自分が得意とすること、関心があること、気になること、にあります。
 
 Oさんにとっては、刀を研ぐことがそれであるに違いありません。だからこそ、それを始めて下さったことを嬉しく思うのです。完成は問題ではありません。今生でそれを始めることに意義があるのです。どうぞ皆さまも、しそびれていることがあったらこの新年、それを始めて下さい。「いつやるの、いまでしょ!」です。



思い立ったが吉日(There is no time like the present

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