出家功徳 №302


出家功徳 

平成27年1月2日
 
 このかんのんだよりが300号になったことを褒めて下さる方がありました。もとより折々の感想に過ぎないたよりをお読み下さる方がいるだけで有難いことと思っていますが、この号に至るまで足掛け7年、それはそのまま、私がこの観音寺に来させて頂いた年月ということを思えばやはりそれなりの感慨を覚えざるを得ません。
 
  その時、第一に思われるのが師の有難さです。私は元々僧侶になる積りはありませんでした。若い時から坐禅には親しんでおりましたが、僧侶になろうという思いはありませんでした。ですから、師匠にめぐり会うことがなければ、私は一介の坐禅居士であることに満足し今日まで至っていただろうと思います。

 しかし、いま自分がこの立場に至って思うことは、師匠に出会い、出家させて頂いてよかった、有難いことであったという思いです。私の師匠は出家を望む者は誰でも出家させるという奇特なお人です。たとえその後の生活がどうであれ、一旦出家得度をしたからにはいつか必ずそれが芽を吹いて仏道につながるという考えなのです。

 正法眼蔵の出家功徳の巻に、酒に酔ったバラモンがお釈迦様に願って出家させて貰ったものの、酔いがさめて自分の比丘姿に仰天して走り去ったという話があります。その時、お釈迦様は「このバラモンは酒の酔いで出家したが、この因縁によって後に必ず得道するであろう」と言われました。まさにこのお釈迦様の言葉が私の師匠のスタンスなのです。

 私はこの師の思いによって出家させて頂きました。思えば、坐禅に夢中だった頃の自分は坐禅誇り、鼻持ちならない人間であったろうと思います。その傲慢をへし折り、出家に導いて下さったのが師匠であります。正師に会わざれば学ばざるに如かず、という言葉通り、私は師匠との出会いによって自分の人生を得ることが出来たと思います。

 私はこの小月観音様にご縁を頂いたことを有難く感謝しています。この地、この小月観音様に縁を頂いて、私は自分の人生の予定以上のことが出来たのではないかと思います。それも師にめぐり会い、出家をさせて頂いたからです。珍重無上。申し遅れました。私の師匠は福井県永平寺町の天龍寺住職、笹川浩仙師です。九拝。

浩仙師匠曰く
    「池作れば月宿る」


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