祥子さん №322

祥子さん №322
平成27年 5月16日


祥子さん 
  
 祥子(しょうこ)さん。重村祥子さんがこの二日、亡くなりました。享年63。女性の平均寿命が88歳を越えるいま、早すぎるその逝去になお呆然たる思いでいます。祥子さんは昨秋、膵がんが発見されました。実はその時すでに手術できないほど進行していたということですが、ご本人はお元気そのものでありました。それだけにまだ信じられぬ思いを拭えません。
 
 祥子さんはこの観音寺にとって大変有難いお人でした。嫁同士の惠子さんと本堂のお花守りを買って下さり、法要時だけでなく、日常的に水替えや差し替えなどお花の世話をして下さいました。この観音寺は堂内も境内も生花の絶えない有難いお寺ですが、その大変な仕事をして下さっているお一人が祥子さんだったのです。
 
 そればかりではありません。観音様の会の時などのお接待もお手伝い下さいました。料理の下拵えを行い、配膳の時には器選びから盛りつけに至るまで実に手際よくこなしてくれました。盛りつけたお皿に木の葉一枚を添えて季節の風情を醸し出すという感性もお持ちでした。まさに才媛という言葉がふさわしいお方であったと思います。
 
 同時に、優しい心配りをされるお方でもありました。それこそ二日、亡くなる日のこと、御主人の咳を心配して「マスクしなくちゃだめよ」とマスクの場所を指差したというのです。今わの際にも人を気遣う祥子さんにご主人は泣ける思いだったことでしょう。 伺った私たちも胸がつまる思いでした。
 
 これは少し以前のことですが、祥子さんが「最近息子に発破をかけられることが多くて…」と半ば嬉しそうに言われたことがありました。思えばその頃から何か思うことをしたいというお気持ちだったのでありましょう。その思いに息子さんはきっと「すぐに始めて…」と促されたのだと思います。よい親子だったからこそのことです。
 
 病癒えれば祥子さんはきっと何かをしてくれたと思います。ご入院中、治ったらこれをしようと心に誓ったものもあるかも知れません。それを思うと一層無念が募ります。残された私たちに出来ることは、その願いを我がものとして自分がしようと思うことに懸命に取り組むことでありましょう。ご冥福をお祈りしてやみません。

こと過ぎて つのる淋しさ 野辺の花







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