忘れない №367

忘れない
平成28年3月17日 
 あの東日本大震災から5年。 津波で被災した人々の高台等への集団移住は約3割が実現したと言います。しかしこれも、事業の長期化や縮小化でいずこも変更を余儀なくされているばかりか、実現した移住地でも買い物や交通手段など生活の不便を初め、これからの町づくりをどう進めていくかが大きな課題になっています。

 コミュニティーの維持・形成では原発地域は今なお深刻な状況を免れていません。毎日新聞が実施した岩手、宮城、福島3県の被災地市長村長アンケートでは岩手、宮城両県では「おおむね復興」が多いのに、福島は12市町村のうち僅か3つ、原発周辺地域はむろん、他の殆どが「復興していない」「あまり復興していない」と答えています。

 同じ日(39日)、映画監督、山田洋次さんのインタビュー記事が載っていました。山田さんはその中で「震災の犠牲者のことを真剣に考える国であってほしい。国は五輪や憲法改正なんかよりも優先してやらなければならないことでしょう」と言われていますが、本当に山田さんがおっしゃる通りだと思います。

 同時に私は震災や津波で亡くなった多くの人たち、取分け若い人たちの無念の思いを忘れることはできません。犠牲になった人々の慰霊の第一歩は忘れないということです。供養の基本は犠牲者の無念の思いを忘れず祈りを続けるということです。そのことによってしか死者の力を頂くことはできないのです。

 奇しくも今日、真砂さんと有志の方々が作成に励んで来られた「しのぶぐさ」の開眼とお披露目を迎えることが出来ました。この「しのぶぐさ」は、いわば個人持ちの過去帳ですが、その意味は自分がお世話になった方々を忘れないということです。受けた恩を忘れず自分もまた恩の施しに努めようとすることです。

 脚本家、倉本 聰さんが「恩送り」という言葉を言われています。「恩返しは当座の謝礼だが、恩送りは未来永劫に対し、その恩を返していく行為」と言われます。受けた恩を返すのは当事者でなくともよいのです。恩を忘れず、援助を必要とする人に援助してあげればよいのです。それが恩を送るということでしょう。
 


    見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。
                    ~金子みすゞ~


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