また「出生前診断」考 №376

平成28年5月16日 

また「出生前診断」考

 先達て425日の毎日新聞に「新型出生前診断利用拡大」という記事がありました。出生前検査については、このたよりでも以前、二度ほど取り上げたことがありますが、今回の記事によれば、検査を受ける人が拡大する一方の中で、異常と診断された人のほとんどが中絶を選んでいることが分かったというのです。

 繰り返しになりますが、この「新型出生前診断」(NIPT)というのは、正確には「母体血胎児染色体検査」と言い、妊婦の血液を採取して胎児のDNAを解析することで21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーと呼ばれる3種の染色体異常を調べる検査です。このうち21トリソミーがダウン症であることはご存知と思います。

  新聞によれば、これまで検査を受けた女性は27696人。このうち陽性反応があったのは1.7%にあたる469人でしたが、このうち羊水検査で異常なしとなった35人、流産・死産の73人と不明の人を除いた残り346人のうち334人が中絶をしたと言います。中絶の割合は実に96.5%。中絶しなかったのは12人だけということでしょうか。

流・死産の73人と出産したと思われる12人は、陽性を承知で産む決心をされたのでしょうが、その数は中絶を選んだ方の4分の1ほどに過ぎません。紛れもなく出生前診断が命の選別につながっていると言うべきでありましょう。私は中絶した人を責める積りは毛頭ありません。誰もが苦渋の選択であったはずです。その是非を論じる資格は誰にもありません。
 
 しかし、この診断検査が商業化された医療サービスとしてこのまま続いて行くならば、結果として命の選別が進んでいくことに私たちはどう対応したらよいのでしょうか。私は陽性者に対するフォローアップ体制が十分に出来ていないことが一番の問題だと思います。中絶の割合の高さはそれが原因ではないでしょうか。

 陽性と診断された方の苦悩はもちろんです。しかしその時、障害児に対する正しい知識や出産、子育ての支援情報があれば、出産を決意される人もあるかも知れません。国や地方自治体は一刻も早くこのフォローアップ体制を作るべきです。この検査がナチスドイツの優生主義につながってはなりません。


   人間はみな障害者

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