「あなたの行く朝」 №424


 「あなたの行く朝」
平成29年3月20日

 はや三月も下旬。今年もまた進学・就職を目前にしている若い方々にとって今は心境特別の時と思います。進学される方も就職される方も新しい学校、新しい仕事への期待と不安でいっぱいでありましょう。同じような体験をしてきた一人として皆さんが勇気をもって進学・就職されることを願って止みません。

 そう願っていてふと思い出すことがありました。私には何と私を「師匠」と呼んでくれる友人がいます。教員時代の方で私より一回りも若い方です。私が仕事を辞めて一大決心の修行に行くことを伝えた時、その方から餞別に頂いたのが加藤登紀子さん作詞作曲の表記の歌「あなたの行く朝」だったのです。

 友人は私が差し上げたはがきを見て、私が友人と縁のない遠い世界に行ってしまうという寂しさを覚えたと言います。その気持ちを代弁する歌として「あなたの行く朝」を選んでくれたのでありましょう。実はこのテープを頂いたのは師匠の寺に行った後でしたが、それだけに一層、この歌を自分に重ね合わせずにはいられませんでした。

 歌は「いつの間にか夜が明ける/遠くの空に/窓を開けて/朝の息吹を/この胸に抱きしめる/あなたの行く朝の/この風の冷たさ/私は忘れない/いつまでも」と始まります。旅立つ者には寂寥がつきものです。私は改めて自分の出発の時の言いようのない寂しさを思い出さずにはいられませんでした。それは歌の通り見送る者も同じなのでありましょう。

 考えれば人生は別れと出会いです。一つの別れは一つの出会い。一つの出会いは一つの別れ。その繰り返しこそが人生ではないでしょうか。別れも出会いも出発です。出発とは別れであり出会いであります。たとえそこに寂しさがあってもそれは越えるべき寂しさです。新しい喜びに出会うための寂しさです。

 若い皆さん。旅立ちを目の前にしている皆さん。どうぞこれからのご自分のために勇気をもって進学・就職してください。加藤登紀子さんはこの歌の最後に「あなたの行く朝の/別れのあたたかさ/私は忘れない/いつまでも」と歌っています。別れにはあたたかさもあるのです。ビバ・ヤング。bon voyage


      「サヨナラ」ダケガ人生ダ
             ~井伏鱒二「厄除け詩集」~



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