寅さんを生きる №491

寅さんを生きる
平成30年6月16日

 「私生まれも育ちも葛飾柴又。帝釈天で産湯を使い姓は車名は寅次郎。人呼んでフーテンの寅と発します」。ご存知映画「男はつらいよ」の寅さんの口上です。私事で恐縮ですが、私30代初めの頃、千葉県松戸市の矢切に住んでいましたので「矢切の渡し」の対岸にある柴又は馴染みのある懐かしいところなのです。

 いやまた何でこんな話かと言いますと、今年は「男はつらいよ」の原点になった連続ドラマ(フジテレビ)放映から50年。そして寅さん役を演じた渥美清さん生誕90年に当たるのだそうです。しかし、この映画48作目、最後になった9512月の「寅次郎紅の花」から23年も経ったいまでは若い人の大半は「寅さん?何それ」かも知れませんね。

 でも、この映画が好きでよく観た私はいま単に懐かしさだけでなく改めて寅さん的人生の大切さを思うのです。先日のこのたより(四情発散)で喜怒哀楽に素直に生きることの大切さを申し上げましたが、考えるとまさに寅さんこそ喜怒哀楽に素直に生きた人と言えるのではないでしょうか。それがこの映画の面白い魅力であったのだと思います。

 喜怒哀楽に生きる寅さんは設定上テキ屋稼業がピッタリですが、それを演じた渥美さんがテキ屋役にうってつけでした。山田監督は渥美さんのテキ屋の口上の鮮やかさに感心して主人公の仕事をテキ屋に決めたのだそうですが、何と渥美さんは少年時代、当時御徒町に大勢いたテキ屋の口上に魅かれて一生懸命暗記したというのです。

 山田さんは寅さんという人物を「いつまでも青春期にとどまっているというちょっと幼稚な男なのでしょうね」と言われていますが、だからこそ素直に笑ったり泣いたり怒ったりすることができたのでしょう。「いつまでも青春」は青臭いと半分バカにもされますが、渥美さんはそのいつまでも青春の寅さんを見事に演じられました。

 仏教では「ありのまま・あるがまま」を大切にします。ありのまま・あるがまま、とは飾らないということです。背伸びせず卑下もしない。それは自分の心に素直に生きるということです。しかし、かっこよく見せたいとか恥ずかしいという気持ちがその邪魔になります。人生、寅さんがモデルですね~。
 
   そのままでいいがな
         ~相田みつを~
 

 

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