徴用工問題を考える №562

徴用工問題を考える 
令和元年11月12日

 元徴用工訴訟で韓国の最高裁にあたる大法院が日本企業に賠償を命じる判決を出して一年、日韓関係はかつてないほど冷え切った状態が続いています。この状態が続けば差し押さえられた日本企業の資産売却とか日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効という一層の悪化になりかねません。

 日本政府はこの問題に対して「完全かつ最終的に解決済み」と言い続けています。その根拠にしているのは1965年の「日韓請求権協定」です。しかし、この協定で消滅したのは外交保護権であって個人請求権は消滅していないということは日本政府自身が言っていることですから解決済みということに矛盾は否めません。

 日本政府が「個人請求権は消滅していないが裁判によって請求できなくなった」としているのは裁判を受ける権利を保障する世界人権宣言や国際人権規約など国際法の義務に違反すると言われているのですからこの日本の主張を韓国の人たちが納得することはないでありましょう。個人請求権を認めながら裁判に訴えることはできないというのはヘンとしか言えません。

 徴用工問題は日本の負の歴史です。戦時中、労働力不足に陥った我が国は植民地化していた朝鮮に労働力を求め、男性の場合は募集、官斡旋、徴用の名目で、女性の場合は女子勤労挺身隊という名目で人を集めました。しかし、その実態は募集など名ばかりの強制動員であったと言います。そしてその人たちが炭鉱や土木現場等で危険な重労働に従事させられたのです。

 女子勤労挺身隊で徴用された少女たちは「女学校に行ける」という約束も守られず給料もまともに支給されないまま親と引き離されて軍隊式の共同生活を強いられ、貧しい食事で危険な重労働をさせられたと言います。同年代の日本の子どもたちは空襲を避けて疎開しているのに勤労挺身隊の少女たちは軍需工場で空襲の恐怖に怯えながら働かされたというのです。

 二度と繰り返してはならない非人間的な行為。この失敗を繰り返さないために西ドイツ大統領であったワイツゼッカーさんの言葉を改めて胸にしたいと思います。ワイツゼッカーさんはこう言っています。「過去に目を閉ざす者は現在に対しても盲目になる。非人間的行為を心に刻もうとしない者はまた同じ危険に陥る」と。
 
歴史を変えたり無かったりにすることはできません。
 
           <ワイツゼッカー>

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