「共存」考 №761

「共存」考

令和6年1月8日

 前号で共存の祈りの輪を拡げたいと申し上げました。それができたらどんなに素晴らしいかと思います。しかし、祈りの輪が拡がっても共存の実現にはなりません。まずは互いの違いを知ることでしょうが、知った違いを乗り越えるためには容認とか妥協とか宥和とかが必要になるのです。

 先日、面白い話を聴きました。共存を考える上での参考にその話をご紹介しましょう。先達て暮れのこと、奄美諸島の徳之島で飼っていたハブ11匹が逃げてしまうことがあったそうです。どうやら閉め忘れた排水溝から逃げ出したようですが、同じかどうかは別にしてその後11匹は捕らえられたそうです。

 すごいと思ったのは島民の反応です。住民は平然として「共存してます」と言ったのだそうです。むろんハブは人間にとって恐れの対象ですし、他の動物にとっても脅威の存在であることは言うまでもありません。そのハブに対して平然と「共存してます」というのはどういうことなのでしょうか。

 一つにはハブが島の主要農産物であるサトウキビを食い荒らすネズミを食うということがあります。怖い存在ではあるけれども役にも立っている。その思いが「共存」につながっているのでしょう。国立環境研究所の五箇公一さんは「大事なことはこういったものとうまく共存していくというライフスタイル」だと言われますが。まさにそれでしょう。

 昨年秋には東北各県でクマに襲われる人身被害が頻繁に起きました。この原因についてはクマが山でエサにしているどんぐり類が不作だったからだとかクマが人里近くに棲むようになったからだとか言われていますが、これからクマとどのように共存していくかも考えなければならなくなりました。


 暮れ129日に還暦を迎えられた皇后雅子さまがそのご感想で「平和な世界を築いていくために人々が対話を通して相手の置かれている状況を理解しようと努め、互いを尊重しながら協力することがいかに大切か改めて感じます」と言われましたが、まさにこのお言葉こそ人類共存ではないでしょうか。


「地球規模の環境問題は、

 私たちが協力し合いながら

 真剣に取り組まなければならない

 喫緊の課題だと思います」

                  皇后雅子様


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