随所作主 №135

平成24年4月1日

随所作主


 つい先達て、朝のお勤めが終わって外が明るくなった頃、突然S君が本堂に現われました。こんなに早く、と思ったら、お別れに来たというのです。S君は出向で防府の車工場に勤めていたのですが、またもとの佐渡の工場に帰ることになったと言います。S君にとって山口での生活は充実した楽しい毎日であったということですから佐渡に帰るのは望みではありません。 ずっと山口にいたいというのが本音なのです。心残りの別れでした。

 これより十日ほど前、所要で神奈川に帰宅した折、以前同僚だった女性のA先生から驚くほど素晴らしい話を伺いました。A先生は定年まで三年残して今春の退職を決意されたのですが、何とそれを待ってくれていたかのように箱根にある「星の王子様ミュージアム」の館長という願ってもない仕事を任せられることになったというのです。

 三月は卒業と別れの時、四月は出発と出会いの時と言いますが、私は上のS君、A先生に共に「随所作主」(随所に主と作(な)る)という言葉を紹介しました。この言葉は臨済宗の開祖、臨済義玄の言葉ですが、この語句には「立処皆眞」(立処皆な眞なり)という言葉が続いています。「随所に主となれば立処みな眞なり」とは、あなたがおもむくところあなたが主人公になればそこに真実が現れるということです。

 主となる、の主とは真実の自己、無位の眞人を言いますが、私は与えられたところで全力を尽くすと解します。全力を尽くすことが真実の自己を現わすことにつながると思うのです。分かりやすく言えば一生懸命努めることだと思います。人が一生懸命、必死になった時不思議な力、天の助けがあることを私は信じてやみません。

 S君にとって佐渡での生活は今までのように楽しいものではないかも知れません。しばらくはきっとそうでしょう。また、Aさんはこれから未経験の仕事に取り組む訳ですからその苦労と不安は並みではないはずです。だからこそ私はお二人に、いやこれから新しい出発をされる全ての皆さんに与えられたところで全力を尽くすことをお願いしてやみません。

Heaven helps those who help themselves.
天はみずから助くる者を助く

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