「ご心配です」 №262

「ご心配です」 №262
平成26年 5月 8日

 先日のことです。朝のお勤めの後、皆さんと話していて、例の山口言葉「しあわせます」の話になりました。いつでしたか、このたよりにも書きましたが、この「しあわせます」という言葉は、山口言葉の中でもとりわけ皆さん親しみを感じ、また快い言葉として使われているように思います。元神奈川県民の私も美しい言葉だと思います。
 
 それはなぜかと言えば、この言葉が基本的に感謝を表わしているからでしょう。「お出で下さればしあわせます」と言えば、それは「来て下さったら有難く嬉しいです」ということであり、その根底には感謝があります。同時に話し手の謙虚な気持ちもありましょう。この言葉が快く使われる所以(ゆえん)と思います。
 
 皆さんと話しながら、「ご心配です」という言葉を連想しました。これもやはり山口言葉でしょうか。こちらに来て初めてこの言葉を聴いたとき、大変新鮮な印象を受けたことを覚えています。普通「心配」と言えば、不安や悩みに対する心痛の状態を指すのでしょうが、「ご心配です」の「心配」は文字通り心配り、配慮ということだからです。
 
 これは心配という言葉の本来の意味と言えますが、そこにはことの達成に頑張って努力している人に対するねぎらいといたわりがあります。その根底にあるのはやはり感謝でありましょう。目標の達成に努力している人に対する敬意、賞賛が「ご心配です」という感謝とねぎらいの言葉になったのだと思います。
 
 本当に言葉というのは不思議ですね。思いがけぬ一言が人を生かしたり殺したりします。道元禅師は言葉のうちでも「愛語」の大切さを言われました。「人々を和ませ、恨みを持つ敵さえ降伏させるものは優しい言葉、愛の言葉である。愛語には時勢を一変させる力があることを知るべきである」と言われました。それが言葉の力なのです。
 
 道元禅師はまた、愛語を直接聴いたならば、その人は心楽しくなるし、間接に聞いたならば、その言葉を肝に銘じるであろう、と言われました。私たちもこの教えを自らの戒めとし、周囲に対して愛語を心掛けましょう。それはめぐりめぐって自分自身を楽しくさせ、言葉の力を我がものにすることになるのです

    

      みなひとを 励ます愛の ある言葉
    めぐりめぐりて 己がしあわせ
             読み人知らず

























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