平成26年5月16日
「出生前検査」再考
先月末(4月28日)、NHKテレビのクローズアップ現代で出生前検査が取り上げられていました。新型出生前検査が導入されて一年、この検査を受けた8000人のうち陽性と判断された人の多くが中絶か否かという重大な決断を迫られているという報告でした。検査以前に予想されたこととは言え、この検査の問題を改めて思わざるを得ませんでした。
新型出生前検査については、このたより№236(H25/12/12)でも取り上げたことがありました。その折の毎日新聞の報道によれば、この検査を受けた結果、陽性と診断された54人のうち53人が中絶を選んでいたということでした。その時、私が思ったことは、この検査がさらに普及した時に生じる命の選別という危惧でした。
しかし、今回のクローズアップ現代の報告で、その危惧がすでに現実化していることを知ることになりました。今回の報告でも兵庫医大で検査を受け、その結果が陽性であった6人のうち5人が中絶を受けたといいます。導入一年、出生前検査が早くも障害者を生まないための検査になっているという現実を私たちはどう捉えればよいのでしょうか。
問題の一つに、わが国はこの検査に関する支援体制が出来ていないということがあります。ドイツではすでに20年以上の議論によって「妊婦葛藤法」が作られ、それに基づいた「妊婦葛藤相談所」が、中絶者や障害者家族に対する支援を行っているといいます。その結果、ダウン症の子を「待ち望んだ私たちの子ども」と言う夫婦も紹介されていました。
すでに出生前検査が存在している以上、これを命の選別、障害者排除のための検査に終わらせないために国や自治体は早急に対策を取らなくてはなりません。検査を受け、陽性と判断された時にどうするかは親の判断でしょうが、その判断が親にとって最良の判断となるような支援が必要なのです。
前回のたよりで、障害者には障害者としての人生を自ら選んで来る人もあると申し上げました。出生前検査が障害者排除の手段になってはなりません。障害者としての人生を自ら選んでくる魂にとっては無論、私たちも障害者に学ぶ人生を送らなくてはなりません。老若男女、さまざまな人がいる。それが人間世界なのです。
鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。
金子みすゞ
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