”14・長寿を生きる №285

”14・長寿を生きる №285
平成26年 9月18日


14・長寿を生きる
 
 下関市いきいき支援課によると、今年三月末現在の下関市の百歳以上の人は231人だそうです。この数は昨年同期に比べて若干減少したそうです。とはいえ、今年日本男性の平均寿命が80歳を超えたという最近の報告が示すように、わが国が世界的に益々長寿の国になっていることは疑いを入れません。
 
 毎年九月、敬老の日に因んでこのたよりでも長寿時代の生き方を考えてきましたが、私の根底には、日本が長寿即幸福とは言えなくなったという思いがあります。前にもご紹介した梶原スミ様のように百二歳にしてなお心身お健やかに趣味の編み物を続けておられる幸せなお人もいらっしゃいますが、現実は決してそのような方ばかりではありません。
 
 人は誰しも年齢を重ねれば心身の衰えを自覚せざるを得ません。仏教がいう人間の四苦は生老病死ですが、その老病、そして死を痛切に思うのが人生の晩年です。しかし、思いますに老病死を身近に思う時こそ人生にとって大切な時ではないでしょうか。この時こそ身に迫る切実な問題に真剣に向かうことが必要ではないでしょうか。
 
 先日ラジオを聴いていましたら、看取り医を自称する大井 玄さんというお医者さんが正に上のこと、老病死の過程を味わうことが人生の詩になると言っておられました。大井さんは巡り合った人々の闘病から生まれた詩を「病から詩が生まれる」という本にされているそうですが、病の苦痛の中での詩が人生を味わうことだとおっしゃるのです。
 
 番組の中で紹介された川柳、俳句を二三紹介しましよう。「老夫婦今日も元気に物忘れ」「銀河系宇宙の隅のホタル狩り」「命かな書くこともなき初日記」。ここには認知症をも笑い飛ばすユーモアや壮大な宇宙から見た客観、人生の観照があります。そして、それはそのまま老病死を突き抜けた人生を表わしていると言えましょう。
 
 大井さんは人生の詩の大切さと同時に沖縄県佐敷町(現南城市)での体験からお年寄りが穏やかに過ごせるためにはお年寄りに敬語で接すること、生活のリズムがゆっくりしていることの大切さを上げておられます。皆さんもご自身は無論、身近にお年寄りに接しておられる方はどうぞこの二つのことも心掛けて下さい。
 


        米負いて母と歩みしホタル道
        痴呆仏憩い給いしハスの上
                 大井玄人










0 件のコメント:

コメントを投稿