アンパンマン2 №289

アンパンマン2 №289
平成26年10月13日

アンパンマン2 
 
 アンパンマンの作者、やなせたかしさんが、昨年1013日に亡くなって1年になりました。アンパンマンの人気は、衰えることなく続いていますが、ではなぜ、アンパンだったのか。この発想の元には一つのエピソードがあります。おやつはアンパンというほどアンパンがお好きだったやなせさんご自身の体験があったというのです。
 
 やなせさんは高知県香北町のご出身ですが、子どもの頃、友だちの家に遊びに行っての帰りのことです。駅まで来てサイフを失くしたことに気づき、仕方なく家を目指して線路を辿っていると、思いもかけず、友だちとそのお母さんが追いかけて来てくれて、その時に貰って電車の中で食べたアンパンの味が忘れられない味になったというのです。
 
 やなせさんは後年、その時のアンパンの味を「食道に沁み粘膜に沁み心に沁みた」と述懐されていますが、この体験が後にアンパンマンを生むことにつながるのです。「本当のスーパーマンはほんのささやかな親切を惜しまない人」というやなせさんの確固たる信念に基づくアンパンマンのルーツはここにありました。
 
 それを決定づけたのが戦争体験でした。やなせさんは日中戦争の体験から「戦争に真の正義はない。本当の正義とはひもじい人を助けることだ。自分を捨てて相手を助けることだ」と悟ったのです。アンパンマンが今の姿で登場したのは1973年ですが、その原型となったアンパンマンは、まさに自分を犠牲にしてひもじい人を助ける”おっちゃん”でした。
 
 今の日本は一見、アンパンマンが活躍する場は少ないように思えますが、実はそうではありません。子どもの貧困が広がっているのです。空腹をかかえ、おなかいっぱい食べたいという願いが叶わない子どもたちが沢山いるのです。貧困率16.3%、実に6人に一人の子どもが1日当たり食費329円という状況にあると言います。これをみなさんはどう思われますか。
 
 飽食と言われる陰に飢えに苦しむ子どもたちがいる。食べざかりの子どもにおなかいっぱい食べさせてやれないことを悲しむ切ないお母さんがいる。このまぎれもない日本の現実を皆さんはどう受け止めますか。私に出来ることは何か。そして皆さんが出来ることは何でしょうか。

   


        「前向きに倒れて死にたい」
              やなせたかし







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