キノコとセミ №312

キノコとセミ №312
平成27年 3月17日


キノコとセミ
 
 キノコの語源は「木の子」です。言われてみれば、確かにキノコは木の姿に見えますね。キノコの多くは傘を持っていますが、その傘を繁る枝葉、茎を幹と見れば木の姿そのままです。子どもの頃、柿の種を割ったら中に木そっくりの模様があってびっくりしたことがありましたが、キノコが木に似ているのも偶然ではないのでしょうか。
 
 突然、話が変わりますが、セミっていますね。そう、夏に鳴くセミです。あのセミとキノコって全く異なる生物ですが、両者には共通点があります。先達ての観音様の会で皆さんにお尋ねしたら「命が短い」という答えがありました。確かにキノコは数日、セミは十日内外の寿命だそうですから両方とも短命。短命は共通点と言えますね。
 
 しかし、実はもっと大きな共通点があります。キノコもセミも「花」なのです。えっ、とお思いでしょうか。昆虫を花と言うのは乱暴かも知れませんが、植物の花が生殖器官であるなら、キノコもセミも生殖器官、花と同じなのです。となると、キノコとセミの花の本体は何かということになりますね。
 
 キノコの多くは坦子菌類だそうです。この菌類の子実体(生殖体)が、私たちが目にするキノコなのです。ですから、キノコの本体は私たちが普段目にすることのない菌類だと言えましょう。その菌類が繁殖のために作り上げたものがキノコなのですから、キノコは本体である菌類の特別な姿なのです。
 
 ではセミはどうでしょうか。セミの多くは成虫になるまで数年、中には十数年を要するものまであると言いますが、その期間を地中で過ごします。そして最後、繁殖の時に地上に出て羽化した姿が私たちの見るセミなのです。ということは、セミは本来、地中の生物であるということにならないでしょうか。
 
 キノコとセミのように、生物というのは、私たちが見ている姿と本体とには思いもよらない相違があるとすれば、人間はどうかと思われませんか。私たちが互いに見ている人間は人間という生物の本体なのでしょうか。それとも人間の本体は私たちが普段見ていないところにあるのでしょうか。





      花を支える枝 枝を支える幹 
      幹を支える根 根は見えねんだなあ
               相田みつを













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