臨死体験 №316

臨死体験 №316
平成27年 4月 9日
 臨死体験

 先日、NHKBS3夜にわたって「死ぬとき心はどうなるのか」という番組がありました。20数年前からこの問題を探り続けている立花隆さんの取材と思索の足取りを追ったものです。この問題の糸口になるのは、ご存知、例の「臨死体験」ですが、この不思議な体験はそれがどうして起こるのかがまだ分かっていないのです。
 
 臨死体験には二つの考えがあります。一つはそれが脳によって起きるという脳内現象説です。そしてもう一つは、肉体が死んでも「意識」が存在し続けるという魂存在説ですが、脳科学者の殆どは脳内現象として捉えているようです。 実験によってそれが証明できる段階にまで至っているものもあると言います。
 
 しかし、今回興味深かったのは臨死体験をした脳科学者が、脳内現象説から魂存在説に変わったということでした。 臨死体験者はその殆どが体験をリアルな現実として捉え、体験以後は魂(意識)の死後の存在を確信するようになるのですが、まさにその脳科学者は自分自身の体験によって捉え方が逆転したことになります。
 
 ただ今回の番組でも、何故人間の脳に死の間際に神秘体験をすることが備わっているのか、という最も関心のあるところは謎のままでした。大脳辺縁系という脳の古い部位が関係しているのかも知れないとか、人類が長い間に獲得した本能に近いものか、という推測はありましたが、科学ではそれ以上は分からないといいます。
 
 しかし、いずれにしても人間がその人種を越えて、死の間際に神に出会うような不思議な体験をするということが、人間という存在の不思議さを表わしていると思います。その体験が100%脳内現象であったとしても神秘体験が生じるということは、単に死の苦痛を和らげることを目的にはしていないのではないかと思うのです。
 
 お釈迦様の教え、諸行無常は言いかえれば諸行永遠です。終わりがあったら無常ではなくなってしまいます。私たち人間は時間の世界(肉身)と時間のない世界(霊魂)を永遠に変化し続ける存在ではないでしょうか。肉身の世界から霊魂の世界へ移行する時の体験
こそが死の間際の神秘体験ではないのでしょうか。

     


        色は空 空は色との 時なき世へ
            市川団十郎さん辞世














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