幾山河… №324

幾山河 №324
平成27年 6月 1日

 
        朝日差す山路の先にほととぎす鳴きていよいよ(しず)かなりけり
    亡き人を偲びて歩む山道に午後の木漏れ日ゆらめきてあり

 先月51215日、また高林寺さま主催のお遍路に行って来ました。今回は「遍路ころがし」という難所のあるコースです。ですから、行く前からそれは覚悟のうちでしたが、実際はコースのみならず日程もお天気も思った以上にきついお遍路になりました。予定の14か寺はお詣り出来ましたが、筋肉痛は二週間たった今なお直っていません。

 四国お遍路には「遍路ころがし」と呼ばれる難所が何か所かあります。そのうちの一つが今回の12番焼山寺です。1番霊山寺から11番藤井寺までは、急げば一日で回ることも可能な道ですが、一転、この藤井寺から焼山寺へは険しい山道。山腹938mの札所まで16km、所用78時間。ただ歩くしかありません。そこまでが比較的容易なだけに大変さが身に沁みるのです。

 しかし、私にとっては前日の88番大窪寺へ向かう登り下りの方がはるかに大変でした。どうやら以前一周した時に私は車道を歩いたらしいのです。道が大変だったという記憶がないのです。そして逆に、焼山寺への山道はこんなに平坦な道が多かったっけと思うほどでした。大変な道であることは無論なのですが、記憶というのは曖昧なものですね。

 今回は初日12日が台風による雨、その後は快晴に恵まれましたが、逆に夏のような暑い日差しに照らされました。ともにきつい旅になりましたが、これがお遍路の味わいではないでしょうか。雨の降る日も日の照るときも風吹くときもあって当然です。日日是好日。その一日を頂いて歩くのがお遍路なのでありましょう。

 旅というのは本来どんな旅も寂しさを持っていると思いますが、分けてお遍路はその寂しさを感じさせる旅ではないかと思います。冒頭の歌のように、今回は人を偲んで歩くこともありましたのでその思いが一層でした。まさにそれは若山牧水の歌、幾山河越えさり行かば寂しさの()てなむ国ぞ今日も旅ゆく、でした。

 「人生即遍路」という山頭火の言葉をあちこちの札所で見かけました。山頭火の言う通り、人生は旅、遍路に違いありません。

               

                   雨降れば雨に濡れ 
                   風吹けば風に吹かれる
                        洋仙











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