積極的平和 №339


積極的平和

平成27年9月16日


先日のたより「ウソ言葉」(№336)で現政権が安保法案の柱としている「積極的平和主義」という言葉は、実は平和という言葉を装って日本を戦争する国にしようとするまやかしの言葉ではないかと申し上げました。私は「積極的平和」という言葉は安倍首相の造語かと思っていましたが、826日の朝日新聞で、この言葉が半世紀も前に言われていたことを知りました。

 この言葉、「積極的平和」を最初に提唱したのはノルウェーの平和学者、ヨハン・ガルトゥング博士(平和研究国際NGO「トランセンド」代表)だそうです。氏は単に戦争のない状態は「消極的平和」に過ぎないとし、貧困や差別といった構造的な暴力のない「積極的平和」を提唱されたと言います。1960年代のことと言いますからすでに50年以上も前のことです。

 安倍首相がガルトゥングさんの「積極的平和」を知っていたかどうかはさておき、ガルトゥングさんは、ご自分が提唱した「積極的平和」は「Positive Peace」であって現政権が言っている「積極的平和主義」(Proactive Contribution to Peace )とは「言葉も内容も全く異なり、平和の概念が誤用されている」と指摘しています。

 そのうえで博士は、日本が集団的自衛権(この言葉もウソ言葉ですね)を行使するようになれば、中国はさらに軍備を拡張し、その結果「東アジアにはかつてない規模の軍拡競争が起きる」と言います。安保法案が危惧されるのはまさにここです。安保法案はそれを危惧する国、とりわけ中国の軍備増強を促すことは明らかだからです。

 博士はその軍拡競争に陥らないためにEC(欧州共同体)をモデルにした「北東アジア共同体」の創設を提案されます。共同体のメンバーは「日本、中国、韓国、北朝鮮、ロシア極東部」とし、「共同プロジェクトを通じて良い点を発見しながら段階的」に「相互の交流や協力関係」を勧めて行くことを望んでおられます。

 私はこのガルトゥングさんの提案に共感と共鳴を覚えます。世界はもはや憎悪と敵対にあるべきではありません。資源、気候、人口、民族、貧困、疾病等々、どの問題も互いの理解と協力がなければ解決しません。奪い合うのではなく分かち合い、憎み合うのではなく助け合うことをしなければなりません。




うばい合えば憎しみ
わけ合えば安らぎ
       相田みつを


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