仏の教え №370

仏の教え
平成28年4月9日


       人生即苦楽遍路    苦楽遍路の人生を
       輪廻何意義有乎    繰り返すのは何の意味
       釈迦如来是模範    そのモデルこそお釈迦さま
       灌仏得道成明珠    教えを守って仏とならん

前号(№369 親はなくとも…)の続きです。前号で人間にとって究極のモデルはお釈迦さまだと申し上げました。私たちが何百生何千生かかるか知れない人間の本質への到達をお釈迦さまは80年のご生涯をもって示して下さいました。私たちもいつかはきっとお釈迦さまと同じようになれるのだということを身を持って教えて下さったのです。

では、その身を持って教えて下さったこととは何でしょうか。私はそれこそが七仏通戒偈の人生だと思います。これについては以前このたよりでも紹介致しましたね。お釈迦さまの出現以前の六人の仏さまにお釈迦さまを加えた七仏に共通する教えが七仏通戒偈。「諸悪莫作・衆善奉行・自浄其意・是諸仏教」がそれです。

悪いことはしない、よいことをする、心を清らかにする。通俗的な道徳に思えるような、そして、子どもでも分かるようなこの三つを敢えて諸仏の教えとしているのは何故でしょう。もちろん道徳的な意味もあったとは思います。しかし、この教えの真の意味は道徳性の涵養ではなく、もっと別な所にあるように思えてなりません。

人は自分の願いによって生まれてきます。それは人間に生まれてしたいこと、しなければならないことがあるからです。しかし、このしたいこと、しなければならないことは未完成に終わります。完遂出来ることはまずありません。そのことが輪廻の理由なのです。完遂できなかったことを次の生でしようとするから輪廻があるのです。

人は今生と次の生の間で自らの人生を振り返らざるを得ません。今生での誤った言動のすべてを自らが裁くことになります。その苦しみを少なくするのが「諸悪莫作・衆善奉行・自浄其意」の実践ではないでしょうか。七仏の教えは私たちの死後の苦しみを少なくするためにあるのだと思います。


          為()すこと()うして空しく死せば
           後に(くい)あることを致さん
                            「仏垂般涅槃略説教誡経」

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