祥子さん桜 №372



祥子さん桜
平成28年4月18日 

 この観音寺の前庭に人の背丈にも満たない一本の桜があります。もうそこに植えてから何年になるでしょうか。かれこれ少なくも三年。ということは丈の成長一つにしても随分ゆっくりのように思いますが、その桜が今年初めて二輪の花を咲かせました。八重咲きの綺麗な花。遠慮がちに咲いたその二輪の花が風に揺れています。

 その二輪の花を見た時、私は心底安堵するものがありました。実はその桜、昨年、ほとんど枯れかけたのです。春に僅かばかりの葉を出しましたが、その後その葉が繁ることもなく、幹にも全く精彩がありませんでした。心配のあまり枝を曲げると微かに生木の感触はありましたが、見た目は枯れ木そのものだったのです。

 たった二輪とはいえ、今年花を咲かせてくれたことに安堵したのは、実はその桜、亡くなった重村祥子さんから頂いたものだったからです。私が桜の花漬けを作ることを知った祥子さんが、いずれ寺の桜で作れるようにと八重桜の苗木を求めて来て下さったのです。もちろん皆さんに花を楽しんで頂けるようにと前庭に植えたのでした。

 祥子さんが亡くなって間もなく一年になります。もう一年になるのかと思います。私たちはただご回復を信じ、また活躍して下さることを願っておりました。お元気だった姿が今もありありと目に浮かびます。生者必滅・会者定離とは言ってもなお無念の思いと悲しみが込み上げてくるのは祥子さんを知る人みな同じでありましょう。

 祥子さんの桜が花を咲かせてくれたのは、祥子さんが元気でいることを伝えてくれたということでありましょう。私たち生者はいつも死者と共にあります。祥子さんは桜の花で今を教えてくれたのだと思います。私たちも頑張りましょう


     <東日本大震災復興援助募金ご協力御礼>
 
 上記募金ご協力有難うございました。総額12,131円になりました。寺分と合わせ17,131円を災害義捐金として日赤に送りました。皆さまの温かいお心に厚く感謝しご報告申し上げます。



          あれを見よ 深山の桜 咲きにけり
              誠を尽くせ 人知らずとも

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