「しのぶぐさ」 №371

「しのぶぐさ」
 平成28年4月17日


念願の個人持ち過去帳「しのぶぐさ」が出来ました。と言っても、まだ見てもいない方にとっては「何それ?」かも知れませんね。「しのぶぐさ」は経本仕立ての手帳です。布張りの表紙に「しのぶぐさ」とあり、112ページにかけて般若心経、消災妙吉祥陀羅尼、大悲心陀羅尼等のお経が載せられています。

 しかし、この「しのぶぐさ」の本領は、お経に続く「しのぶぐさ」と書かれた罫線だけのページにあります。このページに今は霊界にいる自分のご先祖、友人知人等の戒名や名前を記せるのが「しのぶぐさ」の目的にするところなのです。今は亡き自分がお世話になった方々を忘れず、在りし日を偲ぶというのが「しのぶぐさ」なのです。

 以前、供養の話で上のことを申し上げた折、これにひらめくものがあったMさんが作成を決心され、それに賛同して下さった数人の方々と足掛け二年に渡って一冊一冊丹念に作り続け、それが百冊を越えた先月、観音さまの会に合わせてご披露になり、ご希望の方に差し上げることが出来ました。Mさん初め作成に当たった皆さんのご努力に御礼です。

 そもそも、私がこの「しのぶぐさ」を思いついたのは、以前このたよりでご紹介した長門大寧寺ご住職、岩田老師が提唱されている「地域共同体の本質的な力能は住民たちの力の総和だけでは決してない。実は生者と死者が連結して生み出している能力なのである」という教えにあります。私たちのこの世は実はあの世の力があってなのです。

 このことは地域共同体だけでなく、基本的に個人も全く同じだと思います。私たちは縁によって生じ縁によって生かされています。なかでも人と人のつながり、人の縁こそその中心でありましょう。私たちが生きているのは縁ある人のお蔭です。お世話になった方々の恩を忘れず供養の祈りをすることこそ恩返しではないでしょうか。

 私はMさん達のご努力で「しのぶぐさ」が出来たことに心から感謝しています。そしてこの「しのぶぐさ」をお守りとして持つ人がお世話になった方への祈りを忘れず、同時にまた自分が周囲の人に対してよき力、よき励まし、よき助けとして活躍修行して下さることを願って止みません。
 

       生かされて生きているご恩返しに 
       小さいことでもいい
       自分に出来ることをさがして
       何かをしよう 
                 <坂村真民>

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