お遍路で考えたこと③「たっすいがはいかん」 №458

「たっすいがはいかん」 お遍路で考えたこと③
平成29年11月16日

 上の「たっすいがはいかん」ってどういう意味かご存知ですか。今回、高知のお遍路に行ってあちこちで見た言葉なんです。もちろん土佐弁ですから高知県出身の方ならご存知ではないかと思いますが、私は何のことか見当がつきませんでした。

 あちこちで見たと申し上げましたが、何回も見ているうち、これがキリンビールのコマーシャルであることが分かりました。でも意味が分かりません。で、地元の人に聞いたのです。して分かりました。「たっすい」は「張り合いがない、ひ弱い、気力がない」という意味。つまり「根性がないのはいかん」という意味だったのです。

 ビールにあてはめれば「たっすい」は「飲みごたえがない」ということになります。となれば、「たっすいがはいかん」は「ガツンと来るビール飲めよ高知人だろ」となりますね。余談になりますが、このコピーのお蔭で高知のキリンビールはアサヒのシェアを奪回したということですから効果絶大だったことになります。

 意味が分かって、この言葉はいかにも土佐の国だと思いました。土佐の言葉に「いごっそう」というのがあります。これは「快男児、頑固で気骨のある男」を指して言いますが、この言葉には「酒豪」という意味もあるそうです。豪快に酒を飲む快男児にふさわしい酒こそ「ガツンと飲みごたえがある」酒なのでしょう。

 もう一つ、土佐には「はちきん」という言葉があります。「はちきん」は「男勝りの女性」を表す言葉です。「いごっそう」が高知県男性の県民性を表す言葉なら「はちきん」は高知県女性の県民性を表す言葉。「いごっそう」「はちきん」共に言動明快、酒を好み、頑固に突き進む一本気な性格をよく表す語感を持った言葉だと思います。


 昨年、このたよりで「自由は土佐の山間より」という植木枝盛の言葉を紹介したことがありましたが、明治時代、土佐が自由民権運動の中心地さながらであったのも「いごっそう」「はちきん」の県民性の賜物ではなかったでしょうか。混迷の現代日本、「いごっそう」「はちきん」の再びの活躍を期待して止みません。
 
「たっすい」がはいかんけんど
「てんくろう」(ずる賢い)もまっこといかんよ

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