父の述懐 №466

 父の述懐 
平成30年1月16日

 突拍子もないお伺いですが、真冬の夜、田んぼのあぜ道に布団敷いて寝たとしたら暖かく眠れるとお思いですか。いやこれはお伺いするまでもないこと。幾ら布団にくるまったからと言って家で寝るようにぬくぬく眠れるはずはありませんね。布団全体が外気と同じように冷たくなってしまうことは無論でありましょう。

 実は上のことは私の父の話なのです。どうして父がそんな話をする気になったのかは知りません。私がまだ小学生の頃だったと思います。父が母に自分の子どもの時の話をしていたのです。キャンプのつもりだったのか、子どもだった父が田んぼに布団を持って行って寝たいと言ったのだと思います。そしてそれをお母さんに止められたのでしょう。

 父は「子どもというのは布団が氷のようになってしまうことが分からないんだよなぁ」としみじみ言いました。私がその言葉を今でも覚えているのは、父の述懐が子供心にもよほど印象深かったからでありましょう。しかし、話を脇で聴きながら子供の私は布団があれば大丈夫ではないかと半信半疑であったことも否めません。

 いえ、何でまた私がこんなことを申し上げる気になったのか。それは自分を含めて今の大人たちが想像力を失っているのではないかという気がするからです。冬の夜布団を外気に晒せば布団が冷たくならないはずはありません。子どもにはそれが分からなくても大人ならどうなるかは容易に推測できるはずです。

 しかし今、大人であれば想像し推測できるはずのことが大人も出来なくなっているのではないかという気がしてならないのです。端的に申し上げれば戦争と平和についてです。安保法の改正によって日本は一旦事起きれば戦争に巻き込まれることが明らかになりました。しかし、その時、兵士やその家族、国がどんなになるのかを私たちは想像し得ていません。
 私たちは先の戦争で国民がどんな悲惨と苦しみを受けたか、その被害を味わった人々の心を正しく想像し、その思いを平和の維持に活かすことが出来ていません。今なお癒えぬ韓国中国の人々の苦しみを正しく知ることが足りていません。それは私たちに想像力が失われているからではないかと思われてならないのです。


想像してごらん みんなが 世界を分かち合うんだって
       ~ジョンレノン「イマジン」~


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