平成31年3月17日
出生前診断のこと、このたよりでも何回かその問題点と危険性を提起してきましたが今回改めてその危険性を申し上げたいと思います。この3月2日、日本産婦人科学会の理事会が新型出生前診断(NIPT)の施設条件を大幅に緩める案を了承したというのです。これによって条件を満たせば産科医院でも検査が可能になり検査施設は倍増するとも言われます。
我が国では2013年に始まったこの検査、これまでは産科医と小児科医が常勤すること、遺伝の専門外来があることなどの条件を満たす総合病院が認可施設となっていましたが、この度日産婦は従来の認可施設を基幹施設とし、今回の条件緩和で検査が可能となる産科医院等を連携施設と位置付けて診断の拡大を図ろうとしているのです。
日産婦はこの条件緩和の理由に認可外施設の存在を挙げています。いわば闇で行われる検査をなくすためには認可施設を増やすことが必要ということでありましょう。確かに認可外の施設で相当数の検査が行われているのではないかと見られ、そこでは検査結果の説明が不十分で検査を受けた妊婦が戸惑う事態が起きていると言われます。
しかし、それでは日産婦の思惑通り認可外施設での検査が減少すればそれでよしと言えるのでしょうか。私はこの検査の問題点はそれではないと思います。この検査の一番の問題は検査で陽性と判断された人のうち実に9割が中絶をしているということにあると思います。毎回繰り返して申し上げますが、私は中絶を選ばれる方を非難する気持ちは全くありません。
繰り返しますが、問題はこの診断の陽性者の9割が中絶を選んでいるという事実です。この事実は出生前診断についての十分な説明や陽性者に対するフォローアップが十分でないことを意味しているのではないでしょうか。認可外施設の検査をなくすことも必要でしょうが日産婦が意識しなければならないのは陽性者への援助ではないでしょうか。
私が最も危惧するのはこの検査が命の選別にしかなっていないという実態です。陽性者とその周囲が中絶することを何とも思わなくなった時にはこの人間社会から障害者も老人も排除されることが当たり前になるに違いありません。私たちはそんな社会が来ることを認めてよいのでしょうか。これは私そしてあなたの問題です。
木を見て森を見ず
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