重い選択 №527

重い選択
平成31年3月9日
 37日の毎日新聞一面トップに「死の選択肢 医師提示」という大見出しのショッキングな記事がありました。「透析中止 44歳女性死亡」と続く中見出しの伝えるところ、昨年8月、東京の公立福生病院で、医師が人工透析治療を止める選択肢を提示し、治療中止を選んだ女性が一週間後に死亡したというのです。

 皆さん疾うにご存知のように人工透析治療というのは腎不全になった人が腎臓に代わる血液透析などで老廃物や毒素などを取り除く治療法です。我が国では33万人を越える人がこの人工透析を受けており、それによって日常生活はむろん仕事などの社会生活を支障なくこなしている方も多いことはご存知でありましょう。

 しかし、重篤な疾患を併せ持っている人や透析自体が大変な苦痛になるという人にとっては透析治療が延命にしかならないということもありましょう。報道されたケースがこのどちらかに該当したのかどうかは分かりませんが、上に申し上げましたように医師側から治療中止の選択肢が示され中止を選んだ女性が死亡に至ったのです。

 女性の透析治療に関わった公立福生病院の二人の医師が「透析をやらない権利を患者に認めるべきだ」と言うのに対し日本透析医学会など医療関係者の多くは「医師の独善だ」「医師の身勝手な考えの押し付けで医療ではない」などと批判的であり、8日の続報には、「精神的に不安定な患者に生死の判断を問うことは無理」という患者としての意見もありました。

 毎日新聞8日の続報によれば公立福生病院ではすでに201317年の間に「透析せず」提案を受けた人のうち20人が透析治療をしない「非導入」を選んで亡くなっているそうですから44歳の女性が初めてのケースではなかったということになります。いずれにしても自らの生死を決める重い選択、皆さんはどう考えでしょうか。

 医学医療の進歩で私たちは長寿の時代を生きることになりました。一面それはめでたいことではありますが、その反面は死にたくても死ねないということでもあります。そんな時代にあって意志的な死も含め生死についての考えが変化していくのではないかと思えてなりません。重い課題です。
 
 
死ぬときぐらい好きにさせてよ
          樹木希林
 
 

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