「現代社会」考2 №540

「現代社会」考2
令和元年6月17日

 平成から令和になって1か月半経ちました。皆さまはこの1か月半をどんな気持ちでお過ごしだったでしょうか。平成天皇のご退位による今回の改元はその「奉祝」ムードが政治利用されたという感じが強いですね。元号を決める時から見え見えの政治利用に違和感を覚えた方も少なくなかったのではないでしょうか。       


 それはさておき、平成の30年を振り返って皆さんは何を思われますか。先の天皇陛下は「平成の時代、戦争がなかったことに安堵の思い」と言われました。しかしその一方、平成は東日本大震災を初めとする災害続発の時代でもありました。震災や豪雨災害で多くの命が失われました。そして同時に私たち国民の心の大切な部分が失われたのではないでしょうか。

 些か旧聞に属しますが先々月430日の朝日新聞に「思考停止 変える力を」と題する作家・高村薫さんの寄稿文がありました。高村さんは平成を振り返って「老いてゆく国家とはこういうものかも知れない。自民党の一党支配に逆戻りして久しい政治がそうであるように、この国にはもはや変化するエネルギーが残っていないのだ」と言われるのです。

 この言葉には思わずドッキリでしたが、同時に言われるように「スマホが出口が見えない社会でものを考える苦しさを忘れさせる強力な麻酔になっている」ならば「東北沿岸で18千人が津波にのまれても福島原発が全電源を失って爆発しても、日本社会の思考停止は基本的に変わることがなかった」という指摘こそ妥当と言うべきではないでしょうか。

 高村さんは上に述べた状況の結論として「何よりも変わる意思と力をもった新しい日本人が求められる。どんな困難が伴おうとも、役目を終えたシステムと組織をここで順次退場させなければこの国に新しい芽は吹かない。常識を打ち破る者、理想を追い求める者、未知の領域に突き進む者の行く手を阻んではならない」と述べられています。

 もう50年も前のことですが、医学部から始まった東大闘争の主役となった青年医師連合(青医連)の人たちの合言葉は「スクラップアンドビルド」でした。既存のものを打ち破ってそこに新しい世界をつくろうという思いです。髙村さんの思いにその言葉を思い出しました。いま日本が必要としているのはその精神ではないでしょうか。
 
 
 
    少年よ 大志を抱け
      
      ~ W,Sクラーク博士 ~
 
 

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