「現代社会」考 №539

 「現代社会」考
令和元年6月16日

 先月28日、川崎市でスクールバスに乗ろうとしていた小学生やその保護者らが包丁を持った男に切りつけられて2人が死亡、18人が重軽傷を負うという痛ましい事件がありました。亡くなった一人は小学六年の女子児童、もう一人はミャンマー語を専門とする外務省職員であったとのこと。二人のこれからを考えると無念の思いを禁じ得ません。

 事件を起こした52歳の男は引きこもりであったということですが、注意しなければならないことは引きこもりが直接原因ではないということです。精神障害者が事件を起こすと精神障害が事件を起こしたように言われることがありますが、それが間違った見方であると同様、引きこもりが直接原因と考えることは正しくはありません。

 ただ、川崎の事件の4日後、引きこもり気味の長男を持った父親がその息子を刃物で殺害するという事件が起きました。父親は長男も人に危害を加えるかも知れないと不安に思ったと供述していると言います。そこに川崎の事件の影響を思わない訳にはいきません。それほどにいま日本の現代社会において引きこもりが大きな問題になっているということでしょう。

 今年3月の内閣府の発表によれば、わが国には40歳以上の中高年の引きこもり者が推定613千人いると言います。この人たちが親を失った時生活はどうなりますか。皆さまもご存知と思いますが、引きこもり親子の年齢を表わす8050とか9060と言う数字は年齢だけに留まらない引きこもりの様々な問題を端的に示していると思います。

 この深刻な引きこもりについては国も何もしていない訳ではありません。厚生労働省は各都道府県と政令市におおむね1か所ずつ「引きこもり地域支援センター」を設置し、社会福祉士精神保健福祉士らが電話相談を受けたり訪問支援をしたりしていると言います。また各地にある家族会も同様の活動をしているそうです。

 上の活動は大切です。しかし、さらに大切なことは引きこもりを減らす、作らないことではないでしょうか。不登校、退職、人間関係での躓き、などがその大きな原因であるとすればそういう状況になった時それを乗り越えていく力を育む教育、状況を把握してやり直しを支援するシステムをつくることこそ大切ではないでしょうか。


つまづいたって いいじゃないか

にんげんだもの
         相田みつを




0 件のコメント:

コメントを投稿