重い選択2 №544

重い選択2
令和元年7月9日

 先達てのたより、重い選択(№527)で昨年8月、東京の公立福生病院で人工透析を中止した44歳の女性が一週間後に亡くなったという新聞報道を取り上げました。女性は医師から提示された選択肢、透析中止を選んだということでしたが、たよりを書きながら私が疑問に思い続けたのはなぜ医師は透析中止という選択肢を提示したのかということでした。

 女性の透析に関わっていた二人の医師の思いは「透析をやらない権利を患者に認めるべきだ」ということでしたが、その選択と決断は本来、患者自身がするものであって提示されるものではないように思うのです。案の定、選択肢を提示した医師に対して日本透析医学会など医療関係者から「医師の身勝手な考えの押し付けで医療ではない」との批判がありました。

 ところがです。その日本透析医学会が6月末に開いた学術集会・総会で終末期に限って認めている現行指針を改めることにしたというのです。その背景には現行指針が「非現実的であり現在の医療状況にそぐわない」ということがあるようです。そのことは現行指針に従わない透析施設が多く存在するということでしょうが、ではそれは指針を改定すれば済むことでしょうか。


 この問題、私には医療費が関係していると思われてなりません。いま我が国の透析者は334500人、一人当たりの医療費は月額40万円といいます。新聞によれば厚労省は17年に4万人の新規患者を28年までに年35000人以下に抑えることを目標にしていると言います。日本透析医学会の指針改定にはこの医療費への忖度がないでしょうか。

 私に友人に透析をしながら人並み以上に元気に活動されているHさんがお出でですが、そのHさんが、透析のことをよく知らない人が、公立福生病院の事例から「透析=終末期医療」という印象を持ってもらいたくないと、ジャーナリスト斎藤貴男さんの「いのちに優劣はあるか」(全国障害者問題研究会誌・みんなのねがい)という寄稿文を送ってくれました。

 斎藤さんの文章には医療費についての言及はありませんが、公立福生病院の医師二人は医療費に関して暴言を繰り返している麻生財務相の発言に背中を押されたのではないかという指摘がありました。氏はこの底にあるのは優生思想だと言うのです。斎藤さん言われる通りいま日本には想像以上に優生思想が蔓延しているのではないでしょうか。

優生思想が攻撃し排除する対象は極めて広い。
想像を遥かに超えるレベルで社会を覆っているのではないか。
                   (斎藤貴男)



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