行く手を指す人 №597

 行く手を指す人

令和2年8月8日

 先月722日の毎日新聞に「雨脚が不穏 避難しろ 船頭歴23年 地区全員を救う」という大見出しの記事がありました。先達ての九州豪雨の折、熊本県人吉市で球磨川を知り尽くした元船頭、大垣地区町会長、一橋(いちはし)国広さん(76)の呼びかけで市の指示を待たずに住民が避難し住民全員が人命被害を免れた地区があったというのです。

 避難を呼びかけた一橋さんは暴れ川の異名を持つ球磨川で川下り船の船頭を23年務めたベテランですが、4日午前2時頃、勢いを増す雨脚に不穏なものを感じて国交省のサイトを確認して「ただごとではない」と判断し、午前3時頃から町内会班長3人と手分けして地区50世帯すべてを回って避難を呼びかけたのだそうです。

 お蔭で命拾いをした一人は「避難しろ、水が来るぞ」と叫ぶ一橋さんの鬼気迫る声に目を覚まして避難することができましたが、「こんな被害は初めて。もし一橋さんが起こしてくれなかったら私はここにいない」と言い、ほかの住民も同じように「町会長の判断のお蔭」と口を揃えて感謝したそうです。

 逃げ遅れれば人命被害必至であったと思われる今回の事例を考えると、そこに不思議なほどの幸運があったと思います。その一つは一橋さんという球磨川を知り尽くした人がいたこと。そしてもう一つはその一橋さんが町内会長であったことです。この二つの幸運がなければ今回のような「地区全員無事避難」はなかったに違いありません。

 そして今回のことは国を率いる指導者にもそのまま当てはまることと思えてなりません。一橋さんは長年培った知識と経験で川の氾濫を察知して即座の避難を決意し行動に移すことができました。状況に対する適確な判断とその判断に基づく即座の行動。それがなければ地区住民無事避難はなかったでありましょう。

 いま世界はコロナウイルスはむろん地球温暖化対策にも地球の未来を見据えた正しい判断ができる指導者を必要としています。これからの世界の指導者は人類の行く手を指すことができなければなりません。若い人若い力が必要です。その若い指導者を育てるのは私たち一人ひとりです。皆さまどうぞその覚悟をお願い致します。


「みんなの協力なくして全員を助ける

  ことはできなかった」

         <一橋国広>

0 件のコメント:

コメントを投稿