「塔婆供養」考 №627

 「塔婆供養」考

令和3年4月17日

 この観音寺では年4回の法要の折に塔婆供養をしていることは皆さまご存知と思います。この塔婆供養はご依頼を受けて先祖代々精霊や故人各霊の供養をするものですが、先日Sさんにこの塔婆供養の意味は何ですかと訊ねられました。確かに供養になぜ塔婆なのかと疑問をお持ちの方もお出でと思います。

 塔婆は梵語のストゥーパが原語です。このストゥーパを音写したのが卒塔婆。略して塔婆あるいは搭と言っています。ストゥーパは本来、塚(墓)を意味していましたが、時代の流れとともに木製あるいは石製の搭を言うようになり、我が国では命日などに墓の後ろに立てる五輪塔を模した細長い板を言うようになりました。

 観音寺が使う経木塔婆が上部に地水火風空の切り込みを入れた五輪搭形式になっているのはストゥーパが搭であったことを表わしているのです。寺ではその塔婆の最上部にまず「為」と記し、続いて供養名、その後に「施主○○」と書きますが、これは施主○○が故人○○の供養の為にこの塔婆を造りましたという意味です。

 このように塔婆供養は略儀ながらも「搭を造って供養し冥福を祈ります」ということですから大変尊く有難いことでありましょう。そもそも供養の原義は養(美味しいもの)を供(お供え)するということであり、供養膳がそれに当りますが、そのお膳を供えて追善供養することは故人にとって嬉しいことに違いありません。

 しかし、供養というのは故人に限ったことではありません。今では亡くなった人にするのが供養のように思われていますが本来は生きている人、親とか友人知人に対しても言えることです。親孝行はその典型でありましょう。親に美味しいものを差し上げること、楽しい時を指し上げること、これは供養そのものです。

 私は供養というのは生者にしても死者にしても「力を送る」ということだと思います。美味しいものはエネルギーになります。供養の祈りもエネルギーです。その人を思ってその人にエネルギーを送る行為、それがそのまま供養だと思います。祈りは力。その力を送るのが供養。皆さん、どうぞ供養をして下さい。

 

 いつしかは私も先祖の仲間入り

  供養でつなぐ命の絆

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