「台風一過」考 №700

  「台風一過」考

令和4年10月8日

 下関を直撃した先日19日の台風14号、お見舞い有難うございました。予報では未だ経験したことのない猛烈な台風ということでどんなになるかと心配しましたが幸いなことに予報ほど恐ろしいことはなく過ぎました。これも皆さまが心配して下さったお蔭です。この場を借りて厚く御礼申し上げます。有難うございました。

 余談ながら今回の台風で私は初めての体験がありました。台風の眼に入るという経験です。もちろん強い台風に台風の眼があることは承知していましたが、実際にその眼を体験するということはなかったのです。体験は聞いていた通りでした。眼の中に入った一時間余りは雨も風もなく日さえ照ったのです。不思議な体験でした。

 余談はともかく大変にならずに済んだことは有難いことでありました。台風の翌日20日は朝から爽やかな秋の日になりました。台風が過ぎ去った後はとかく上天気になることが多いらしく、それが「台風一過」という言葉を生んだようです。私はこの台風一過という言葉をずっとこの気象的な意味だと思っていました。

 しかしこの度、爽やかな秋の日差しを浴びながらふと思いました。台風一過という言葉は単に気象的な意味だけでなくほかの意味もあるのではないかと。そう思って辞典を引いてみました。したらありました。「広辞苑」に「台風が過ぎ去った後にはとかく上天気が来るということ」の後に「大きな事件が決着し、晴れ晴れとすること」とありました。

 ついでにとほかの辞典を調べましたら、何と語彙数を誇る小学館の「国語大辞典」には「台風一過」がありませんでした。明鏡国語辞典(大修館書店)と大辞林(三省堂)にはありましたが、意味は気象的な解釈だけでした。語彙の選択とその解釈はもっぱら編纂者の意向一つでしょうが今回は広辞苑にさすがと思わざるを得ませんでした。


 いま台風一過を心から待ち望んでいるのはウクライナでありましょう。人類の敵プーチンによってウクライナはもう7ヵ月もの間、武力侵攻という台風に苦しみ続けています。どうか一刻も早くウクライナの人々に晴れ晴れとした台風一過が訪れますようにと祈らざるを得ません。ウクライナに台風一過を!ウクライナに平和を!


どんな猛烈な台風も

台風であり続けることはできない。

台風一過は必ず来る


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