障害が持つ意味 №709

 障害が持つ意味

令和4年12月17日

人間て不思議なものだと思います。障害児と言われる子どもたちの中にはその障害の代償のように特異な才能を持っている子が珍しくありません。私が養護学校に勤務している時にもそういう子どもたちに何人も会いました。まるでリズムボックスのように両手で様々なリズムを表現できる子がいました。

 音楽で言えば、曲を聞いただけでオルガンを弾くことができる子がいました。驚嘆でした。記憶力で言えば、何日も前のステージ発表会の時のみんなの立ち位置ばかりかその時のみんなの服装とその色まで正しく描ける子がいました。何年間ものカレンダーを記憶していて曜日を言うことができる子もいました。みんな常人には信じがたい異才の持ち主でした。

 一度カレンダー少年に訊ねてみたことがあります。何年も前の曜日をどうして答えられるかが不思議でならなかったのです。聴き質すと毎年毎月のカレンダーをすべて記憶しているらしいということが分かりました。その根底にはカレンダーに対する異常なほどの愛着があるのでしょうが、その結果が信じられない記憶力につながっていたのだと思います。

 いえまた何でこんな話になったかと申しますのは、それら子どもたちの中には独特の感性を併せ持った子がいて、その感性が特異な能力と合わさってその子にしか描けない独特の絵や造形を生み出せるまでになることがあるからです。人間という存在の不思議さはそこにあるのだと思えてならないのです。

 私が養護学校に勤め始めた頃、クラスにY子さんがいました。Y子さんは自閉症でした。こちらの言うことは分かっているようでしたが自分から話すことは殆どありませんでした。そのY子さんがひたすら取り組んでいたのは絵を描くことでした。Y子さんはいま工房でイラストを描き続けていてその絵は高い評価を得て商品化されているのです。


 そのY子さんのお母さんが先日「淡淡と仕事をしている職人気質のYちゃん」と手紙を下さいました。お母さんのその「職人」という言葉に思わず納得するものがありました。Y子さんはイラストレーターの職人になるために敢えて障害を持つことを選んだに違いありません。これが人間の不思議でありしょう


人は自らの人生を計画して生まれる。

      ルドルフ・シュタイナー


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