多国籍社会 №730

 多国籍社会

令和5年5月16日

 4月半ば、政府の有識者会議が外国人労働者の技能を育成する「技能実習制度」と外国人労働者を受け入れる「特定技能制度」の二つを廃止し、外国人労働者の確保と育成のための新制度を創設するという案を示しました。現制度には昨年末現在で技能実習制度に32万人が、特定技能制度には13万人が就労していると言われます。

 両制度のうち技能実習制度は国際貢献を掲げていますが、実態は外国人低賃金労働者の確保でしかなく、多くの外国人が劣悪な条件の下で過酷な労働を強いられてきたことは皆さんもご承知でありましょう。実習生からの訴えが絶えないばかりか失踪者が後を断たないという現実がこの制度の欠陥を如実に表わしていると思います。

 少子高齢化が進む一方の日本は労働者不足が大きな問題ですが、その深刻さが増す一方にあって日本はこれから益々外国人労働者に頼らざるを得なくなります。外国人労働者を低賃金労働者として受け入れるのではなく日本の産業を担うパートナーとして迎えなければなりません。もとより差別などがあってはならないのです。

 日本はすでに多国籍国家になりつつありますが、今後さらに外国人労働者が日本に定着すればその多国籍化は急カーブで上昇していくに違いありません。すでに群馬県大泉町では10人に1人が日系ブラジル人と言われていますが、これから多かれ少なかれ多くの市町村で大泉町同様の状態になることは確実だと思います。

 その大泉町が「日本のブラジル」「ほぼ現地」と言われるほどインターナショナルタウンになることができたのは言葉や文化、習慣を越えた秩序ある町づくりを目指したからでありましょう。これからの日本の各都市は外国人受け入れの先駆になった大泉町を手本に多国籍社会を構築していかざるを得ないと思います。


 私は多国籍社会の根本は「共存」だと思います。言語宗教習慣文化が異なる人が同一の場所で暮らすときに必要なのが共存だと思います。互いの違いを理解し容認し争うことなく過ごすのが共存でありましょう。易しいことではありません。しかし、私たち人類は共存しなければならなくなったと思います。


よそから来た子は 

よそ言葉、どんな言葉で はなそかな。

       金子みすゞ 「転校生」

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