同行二人 №733

同行二人

令和5年6月6日

 先達てのお遍路の感想をもう一つ申し上げたいと思います。それが上に記した同行二人(どうぎょうににん)です。お遍路の人が被る菅笠にこの言葉が書いてありますからそれをご覧になった方もお出でと思います。お遍路はたとえ一人でもそばには必ずお大師様がお出で下さるという意味ですね。

 以前、申し上げたことがあったかも知れません。私は最初のお遍路の時にこの同行二人を実感しました。四国にはお大師様がいまもお出で下さっているということを確信する出来事があったのです。信じられないことですが、札所に置き忘れた日記帳をその翌日、ずっと先の宿で受け取ることができたのです。

 それには不思議としか言えないことがありました。私が札所に置き忘れた日記帳を見つけてくれたのが近くの駐在所のおまわりさんでしたが、何とそのおまわりさんの奥様のご実家が私の宿の近く、たまたまその奥様が明日、実家に行く用事があるので手帳を宿に届けて下さるというのです。信じられないではありませんか。

 今回お参りした87番長尾寺の大師堂に「あなうれし ゆくもかへるも とどまるも われはだいしと ふたりづれなり」という歌碑がありました。お遍路の人は多かれ少なかれこの歌を実感するのではないでしょうか。苦しい時あるいは私のように困りごとができた時、この同行二人を実感するに違いありません。

 その実感の現れでしょうか。八栗寺の大師堂前にはご夫婦で月参り700回を達成した記念に100万円寄付したという碑がありました。月参り700回を達成するには58年かかります。記念碑には令和310月と記されていましたが、ご夫婦はいまお幾つでしょうか。20代で始めても80歳を越えておいではもちろんでありましょう。


 私はこの同行二人はお大師様に限らないと思います。親子も夫婦も同行二人。そして私たちと観音さまも同行二人だと思います。本当に苦しい時、困った時、悩む時、その時には親や子や妻や夫が必ず助けてくれる。観音さまが救いの手を差し伸べて下さる。人生は同行二人です。


衆生被困厄 無量苦逼身

 観音妙智力 能救世間苦

     <観世音菩薩普門品偈>

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