「チャンチキおけさ」考 №741

 「チャンチキおけさ」考

令和5年8月10日

 先月719日は三波春夫さんの誕生日でした。今年は生誕100年だそうですが、三波さんと言えば、まず思い浮かぶのが「チャンチキおけさ」ですね。1957(昭和32)6月のこのデビュー曲が何と200万枚のミリオンセラーになりました。その秘密は一体どこにあったのでしょうか。

 チャンチキおけさは決して陽気な歌ではありません。その歌がヒットしたのは歌詞にあるのだと思います。歌の主人公は出稼ぎ労働者です。当時は全国各地から都会で働く出稼ぎ労働者がいましたが、チャンチキおけさはその出稼ぎ労働者のやるせない切なさを代弁する歌だったのです。

 作詩した門井八郎さんがどんな思いで歌をつくられたかは知りませんが、歌詞2番は田舎に残しっぱなしにしている女性とその母親に対する詫びを言っていますし、3番では夢むなしくしぼんでしまったしがない自分を歌っています。この歌のヒットの裏には歌詞の思いを重ね見る人生の悲哀があったのでしょう。

    涼風一陣爽心身    涼しい風は爽やかに

    驟雨一刻静挨塵    塵を静めるにわか雨

    春夏秋冬季節巡    巡る季節を過ごすのは

    其中衆生皆旅人    とわの旅ゆく我ら人間

 上は本日の火除け法要の法語ですが、巡る季節を過ごす私たちはチャンチキおけさの出稼ぎ労働者と同じように人生の旅人だと思います。その旅は楽しい嬉しいものばかりではありません。むしろつらく悲しい悔恨に満ちていると言った方が当たっているかも知れません。


 7月の観音さまの会の折、人生は遍路、未完成に終る遍路だと申し上げましたが、未完成に終るのはチャンチキおけさの歌のように人誰しも自分の人生に無念悔恨を思わざるを得ないからです。しかし、その無念悔恨があるからこそ次の生まれ変わり、再びの人生があるに違いありません。


故郷を出るとき もってきた 

大きな夢を さかずきに 

そっと浮かべて もらす溜息 

チャンチキおけさ 

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