少欲知足
一か月ほど前のことですが、年度末での早期退職を希望している埼玉県職員多数が一月一杯での退職を願い出たということがありました。二月になると条例で退職手当が減額になるため、そうなる前に駆け込み退職しようという訳でした。その数百名余り、その大半が教員と聞いて驚きました。中にはクラス担任までいたそうです。
報道するところによれば、減額は150万円ほどですが、仮に予定通り、年度末まで勤めたとすれば、給料との差額は7,80万円だろうとのこと。実施時期のまずさはさることながら、駆け込み退職をした教師たちはそれだけの金のために、自分がしてきた教師という仕事に自ら泥を塗ったとはいえないでしょうか。残念の思いを禁じ得ません。
これは新年間もないことですが、坐禅会の後の話の中でMさんが「また景気、景気って言ってるけどもうそんな日本ではないんじゃないですか」と言われるのです。確かにそうです。日本が以前のように右肩上がりの経済成長をしていくことが不可能な今、景気より先にしなければならないことがあるはずです。
Mさんは「いまあるものに満足する生活をしたい」と言われました。私も同感です。今の日本は「大量生産大量消費」の時ではありません。“もったいない”精神で無駄遣いを減らし、ものを大事にする時代です。節電ばかりではありません。節食、節約、節用等々、節を基本とする節欲節制の時代になったのです。
折しも今日は涅槃会。お釈迦様はその最後の説法で「少欲・知足」を言われました。人間に欲は付き物ですが、その欲に突き動かされている以上安心はありません。お釈迦様は「多欲の人は多く利を求むるが故に苦悩もまた多し」と言われます。欲と苦悩は一体なのです。欲を抑えてこそ憂いなき安心を得られると言われるのです。
お釈迦様は同時に、苦悩から脱したいと思うならば、知足即ち足ることを知りなさい、と言われました。知足がそのまま富楽安穏であると言われるのです。際限のない欲望は不平不満と苦悩しかもたらしません。足るを知って、これでよし、と思うことこそ安心安寧に過ごす捷径なのです。
汝等、若し諸々の苦悩を脱せんと欲せば、
まさに知足を観ずべし
~「涅槃経」~
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