人生は旅 №201

人生は旅
平成25年6月7日



                                      人生は旅 
 また、お遍路話の続きです。前号の「土佐源氏」を教えて下さったKさんから、お遍路の後すぐにお礼状を頂きました。そこにこう書かれていたのです。「お蔭さまで実に愉快で発見の多い旅になりました。世間は広く自分の知っていることなどは極端に狭く少ないものだということを痛感いたしました。こうしたことを気づかせてくれた四国の地に感謝しております」と。
 
 私はこのKさんの言葉に深い感銘を受けました。前号でも申し上げましたが、Kさんの博識は実に驚嘆に値します。専門とする中国の教育史、思想史は勿論、古今東西の書に学んだ驚くべき知識は常人の及ぶところではありません。そのKさんが「自分の知識など極端に狭い」と言われることに敬服を感じざるを得ませんでした。
 
 確かに人間の知識には限りがあります。一人の人間が一生のうちに獲得できる知識、経験に限界があることは申すまでもありません。「土佐源氏」でも申し上げましたが、博労の世界とその世界に生きた人の特異な経験は、私など余人の全く知らない世界であり経験です。Kさんが言われることも恐らくは同じ意味でありましょう。

 私の人生に対する思いの一つは「人生は旅」ということですが、旅そのものが人生の象徴であると同時に、旅によって教えられるものが多いのは事実です。Kさんが言われるように一人の人間の知識や経験の狭さを気づかせてくれるのも旅の効用でありましょう。可愛い子には旅をさせよ、という諺の通りなのです。

 近頃流行の中二病、大二病、社二病という言葉をご存知ですか。中学二年生、大学二年生、社会人二年生のビョーキ。ちょっと慣れてきた時に陥りやすい心理的状態を言います。僅かばかりの知識や経験ですべてが分かったような気になっての知ったかぶりや独断、思い上がり、慢心を差して言う言葉です。

 この言葉を聴いて思いました。中二病は誰しもに当てはまると。私たちはちょっと知っただけで全部知ったように思い、わずかな経験ですべてを理解したように思いがちです。今回のKさんの謙虚な言葉に改めてわが身を振り返る思いでした。


 

       

                         知る者は言わず、言うものは知らず
                                    老 子





0 件のコメント:

コメントを投稿