平成25年6月20日
再び「生者と死者」
前号、前々号で「星の王子さま」に出てくる「いちばんたいせつな(本質的な)ことは、目に見えない」という言葉について考えましたが、今回も「星の王子さま」によって「生者と死者」について考えたいと思います。表題を“再び”としたのは、№139号で取り上げたことがあるからですが、それと同じことが「訳者あとがき」に書かれていたのです。
№139号でお伝えしたのは、アメリカの社会人類学者ウィリアム・L・ウォーナーがその研究から導き出した「地域社会の力能は生者と死者が連結して生み出している」という驚くべき結論でしたが、今回私が読んだ「星の王子さま(新潮文庫)」のあとがきで、訳者の河野万里子さんが、王子さまがパイロットから去っていく別れの場面についてこう書かれているのです。
―この別れの場面には、どうしても、かけがえのない人のこの世からの旅立ちが重なって、目がうるんできてしまう。そうして思う。二度ともう会えなくても、王子様の「笑う星々」のように、空を見て、星を見て、その人の笑い声や笑顔を思い出すことができるなら、そのとき人は、どれほど心をなぐさめられ、生きていく力を与えられることだろう、と。―
河野さんは続けてこう言われるのです。「生者は死者によって生かされ、死者は生者によって生きつづける―ふとそんなことばを思い出す。生は死と、死は生と、ひそやかにつながっている」と。このことばに感銘でした。私たちの地域社会は、生者と死者を構成員とする共同体以外の何物でもない、というウォーナーの主張を再び聴く思いでした。
私が皆さんにいつも申し上げていますね。「供養とは生者が死者に力を送ること」と。そして「祈りは力」と。河野さんが言われるように生者が死者に対して、その笑い声や笑顔をありありと思い浮かべて話しかけることができたなら、死者はそれによって多くの力を受け取り、生者に対しても多くの発信をすることができるのです。
6月29日はサン・テグチュペリ生誕113年の日です。
今の世界をどう思っているでせうか。
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